Scribble at 2022-10-07 11:11:38 Last modified: 2022-10-11 08:12:20

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【NHK】ノーベル賞2022特設サイト。各賞受賞者の発表は10月3日(月)〜10日(月)に行われます。こちらの特設サイトで速報します。

ノーベル賞2022 NHK特設サイト|NHK NEWS WEB

このところ恒例となっているノベール賞の laureate (「~賞の受賞者」という重複した漢字を使いたくない。「Nobel Prize の受賞者」と書いてもいいが、どちらにせよペダンティックで印象が悪いのは承知している)については、何週間も前から読売新聞のサイトで「次は日本人がどの賞で受けるか」みたいな、田舎者根性丸出しの傲慢な記事を長々と掲載していたのを苦々しく思っていたところだ。僕は、こういう賞を受けるに値する業績がどこかで成し遂げられたという事実を喜べばいいと思っているので、もちろん一定の基準に該当する業績がないとノーベル財団が判断すれば「受賞者なし」と発表しても驚かない。そしてもちろん、「日本人」なんてセコい地域の人間が一人も受賞しなくたって何の感想もない。そもそも日本は既にアジアで突出した受賞者を出している。そろそろ韓国やベトナムから受賞者が出てくることを期待したいほどだ。というか、何十年か後には中国に受賞者の数で逆転されていてもおかしくない。研究の環境を改善するキャンペーンすら張らずに結果だけ求めるなんて、報道屋風情にとっては飯のタネだからどうでもいいのだろうが、学術に携わっている者として言わせてもらえば、そんな連中は歌舞伎町や心斎橋でウロウロしてる客引きのチンピラと何が違うというのか。

この時期になると、当たり前のように「ノーベル経済学賞」などと嘘を書く者もいるが、経済については別の団体が同じ時期に便乗して発表と授与式を開催しているだけにすぎず、まったく別の銀行主催イベントである。ノベール賞に経済学賞などない(ノーベル財団が公式に否定している)。こういう単純な、ウィキペディアでも読めば小学生でも知ってるような嘘を言い続けては、教科書に掲載されてもいい典型的なアビリーンのパラドクスさながらに誰も公に否定しようとせず、日本人特有の祭りならなんでもやるという噴き上がり(逆切れ)精神と言うべき民族性を古来から延々と維持している事実は、逆の意味で貴重な文化だと言えなくもない。ただし、こういう混乱が生じる原因はノーベル財団にもあって、経済学賞(「ノベール経済学賞」ではなく、ただの経済学賞なのに)の選考基準などについて協力しているのだから、同じ価値のある賞として扱われてしまうのも(表面的には)仕方ないという事情もある。

それにしても、もちろんアインシュタインが存命の頃から日本のメディアはさんざん報道してきたし、興味本位の人々もたくさんいたし、加えてイベントに乗じて現在と同じく量子情報理論などの既刊書を倉庫から出してきたり、あるいはクズみたいな科学ライターや物書きプロパーが2週間ほどで殴り書きしたり同じ分野の研究者からの聞き書きを編集した夏休みの自由研究みたいな俗書を「現代の教養」とばかりに売り歩く。そして、大半の人々はアインシュタインが相対性理論ではなく光電効果に関する業績でノベール賞を受けたという初歩的な事実すら忘れるというわけである。確かに、その時のパブリシティに乗じてしか投資を呼びかけられないとか、書物を売り捌けないとか、イベントに人が集まらないという事情で、刹那的と言ってよい世の中の反応が最初から分かっている人も多いのだろう。過去の事績を大半の人々が歴史や知識として堅実に記憶したり、家庭や学校や職場で継承し共有していくなんていう、「漫画的」とすら言えない非現実的な社会が存在したら、いまごろ大半の国民が現在のわれわれの基準でいう博士号取得者に相当する知見を得て社会人となっていることだろう。

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