Scribble at 2023-03-27 10:16:50 Last modified: 2023-03-27 10:36:44

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斎藤隆一氏の『理容設計学並観測法』という著書が国立国会図書館のデジタル・ライブラリーとして公開されているため、これは本登録しないとアクセスできないから、マイナンバー・カード(本人認証用の表面)を提出して本登録を済ませてから、さきほどざっと眺めてみた。

この時代にあって(昭和9年刊行)新しい業界の指標となるべき著作をあらわそうというのであるから、その意気込みは理解できるのだが、現代の解剖学や理容・美容の知見、それから商業デザイン、あるいは最低でも高校までの数学を履修した者から言えば、歴史資料あるいは読み物としての価値を除けば、はっきり言って稚拙な議論だと思う。疑似科学とまでは言えないものの、単純な比例関係や規則性という「理系っぽい」話を髪型の(正面や側面から眺めた)外形的なデザインに持ち込んだにすぎないというのが僕の率直な感想だ。また、期待していたほどシェービングについて書かれていないのも残念だ。

もちろん、理容師は歴史の経緯として外科医を兼ねる「理髪外科医」だった時代があるため、特にヨーロッパの伝統に影響を受けた戦前の人々には、科学としての医学というスタンスなり憧憬を共有する傾向があったのかもしれない。でも、科学かどうかはともかく学術である以上は、斎藤氏の議論が理容技術に関する唯一の理屈でもない限り、複数の見解が競合して比較されたり修正や置き換えやロール・バックのような推移があってしかるべきだろう。それが全く無くて90年近くも一つ教説の周りでグルグルと解釈学やら現代版の言い換えをしてるだけであれば、それこそ「る*ネット」のように学術研究の訓練を受けていない素人集団の似非アカデミズムやカルトと同じである。

なお、デジタル・ライブラリーの著作を印刷用に PDF としてダウンロードできるが、上記のとおり利用者 ID と氏名などが出力される。こういうのも watermark と呼んでいいんだろうか。

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