Scribble at 2024-04-09 13:09:32 Last modified: 2024-04-09 18:50:16

添付画像

さて、次は矢野健太郎氏が監修したモノグラフ・シリーズだ。これは単元ごとの冊子になっていて、教科書の内容を詳しく掘り下げたり、あるいは大学の数学にまでおよぶ進んだ話題にも手を広げている。もちろん受験問題からの例題解説も多いが、たいていは難問とされるような類の設問なので、僕も現役時代はあまり手を出していなかった(というか、雑誌の『大学への数学』を読んでただけで、僕の母校のような進学校ですら変わり者扱いだった)。

ただ、実際に読み進めていくと、一つの単元でこれだけの分量だから丁寧に書いてあるのだろうと期待したのだが、やはり大多数の数学プロパーが書くテキストなどと同じく、論理の飛躍だとか、skyhook 的なアイデアの導入だとかが多い。これでは、標準的な参考書を水増ししただけにすぎず、概念として正確に理解したり、定理の根拠を納得行くように理解できるかというと、かなり怪しい。ただ、このシリーズはそれぞれ著者が異なるため、書き手によって有効性が変わる可能性もあるから、ひとまず手に入れてある20冊ていどは一通り全て目を通す予定だ。

それから、著者を確認していると、灘高校、高津高校、清水谷高校などと関西の高校の教員が多い。そして、最も多く書いていると思われる灘校の宮原繁という人物の解説が、困ったことに非常に議論の飛躍が多い、悪い意味での「数学プロパー」の文章になってしまっているのだ。これでは単元ごとに集めて買っても大して理論的な理解は深まらないような気がする。受験数学のテクニック的なところをあれこれと知ってるオタクなんて、数学者にはなれないし、もちろん僕らのような科学哲学者にもなれないわけで、静岡の知事と似たような非難をされそうだが、東大を出ても小役人か会計士にでもなるのが関の山だ。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook