Scribble at 2024-09-23 13:45:50 Last modified: 2024-09-24 10:12:43
椹野道流🍣フシノミチル / @MichiruF / スズメバチの巣が初めてうちの軒先に出来たとき、市から紹介された兵庫県ペストコントロール協会に電話した。そのときに「秋に出来た巣はね、冬の始まりにみんな死んで空っぽになります。あと2ヶ月ほどのことです。無闇に殺していい命はないから、置いておけるなら、そのままそっとしてやれませんか。駆除というのは皆殺しのことです。それが本当に必要ですか? 駆除しないとどうにも危ない場所に出来てしまったなら、ご相談に乗りますが」と言われたことをずっと心に刻んでいる。何もかもを許容しろというのではなく、「本当に駆除しなくてはならないか」をよく考える癖をつけることは、とても大切だと思う。
軒下だからキイロスズメバチとかだろうか。いちばん危険なオオスズメバチは土の中や木に巣を作るので、ハチの巣というと軒下にぶら下がってるものを想像する人が多いわけだけど、実はなんも手入れしていない公園とか空き地が危ないという考え方をした方がいい。目が届いていないのだから、なおさら色々なリスクが放置されている可能性がある。
もちろん上のような理屈はあるわけだけど、現実に毎年のように何十人と死亡例があるわけで、やはりこういうスレッドで環境オタクみたいなことを喋ってる人々というのは、「生きてて X なんかに投稿できてるラッキーな人々」でしかないと思う。要するに、これも典型的な生存バイアスや結果論だ。ハチに刺されて死んでないから書けるわけで、反例となるべき死んだ人はイーロン・マスクの子会社がどれほど胡散臭い研究をしていても、X にあの世から投稿する技術などない。
と、茶化すつもりはないのだが、こういう話になると必ず「いのち」(なぜか朝ドラのタイトルみたく平仮名で必ず書くセンチメンタルな人がいる)だとか「生物多様性」という議論が首をもたげてくる。観念としては「みんなでハッピー」みたいな NHK のドラマっぽいものを夢想している人が多いのだろうけど、生物学者が厳密に考えている生物多様性というものは、もちろんハチに刺されて死ぬ人も想定した上での、或る意味では情け容赦の無い概念だということを理解した方がいいと思う。極論を言えば、ハチで死ぬ人を減らすような政策を選ぶよりも生物多様性の方が大切だとすら思ってる生物学者兼活動家が、世界中にたくさんいるのだ(或る種のサイコパスとも言える)。
哲学をやってる人間なら、当然のように生物多様性を重視するのだろうと思われているかもしれないが、そういうわけでもない。あるいは、僕のように日頃から「日本などという矮小な尺度でものを見ていない、人類史スケールの保守思想家」を名乗っていながら、他方では人類という基準でもののありようやあり方を決めるような存在論や認識論は、実質的には「紐付き哲学」だと言っているわけなので、僕は社会思想などについては人類というスケールでの基準を支持しているけれど、哲学者としては更に別の基準を支持しているから、そう話は単純に決められない。ただ、雑感として言わせてもらうなら、僕は生物多様性という概念には強い根拠がないと思う。たとえば、この世界からサメやスズメバチを絶滅させたとして、それでいったい何が起きるというのか。一部の生物学者や、上で紹介した「やさしぃ」人々は、何か生態系なり地球にとって深刻かつ由々しきことが起きるとでも思っているのだろうが、それは何年後のことであり、どこでどういうことが起きるというのか。僕には、どういう理屈でどういう推論ができるのか、まるでわからない。そして、「わからない」からこそリスクであるというのは、もちろん概念としては正しいが、社会政策として害獣を駆除するということを拒否するほどの懸念なのかと思う。
なるほど、多くの「害獣」なり「害虫」は、人が生活するうえで邪魔になるとか危険だという人類の都合だけで決めている場合がある。したがって、生物種を駆除し絶滅させる理由が杜撰に扱われると、そういう社会政策は際限なく実施される可能性はあろう。スズメバチの次は、恐らくゴキブリやネズミかもしれないし、次は奈良以外の鹿かもしれないし、その次はマムシやハブ、そしてカメムシ。そうしたことが延々と続く可能性はある。もちろん、際限なく繰り返すと何か「よくないこと」になりそうだという漠然とした想像はできるが、具体的なリスクはわからない。もちろん、わからないなりにコミットメントするのも一つの見識ではあるが、それはどちらかと言えば「政治的」なものであり、「科学的」とは言えまい。
実際、このハチの事例にしても、解決するのは「いのちを大切に」みたいな妄想でもなければ生態学の議論でもなく、政治的な議論であろう。たとえば、ハチに刺されて死んでなくても、この家の前を通ってハチに襲われそうになった地元の住人がいるかもしれないではないか。でも、いちいち住人に文句を言ってたら、どこの田舎なのかは知らないが逆恨みされるようなことだってあるから、誰も文句を言わないだけかもしれない。