Scribble at 2023-05-06 08:13:31 Last modified: 2023-05-10 07:28:04

プログラミング言語の入門書や解説書によくある構成として、冒頭の1章を使って introductory な内容を紹介するという事例が多々ある。翻訳調で言えば「~ひとめぐり」というやつだ。僕は、これは入門書や解説書の書き方としてというだけにとどまらず、およそ分野とか目的とか想定している読者が誰であろうと、universal に不適切だと思う。つまり、どういう本に書くのであれ要らないものだと言いたい。

まず、これが初心者向けでないのは明らかだ。初心者がこんな雑な説明を見せられても、そのプログラミング言語のケーパビリティや魅力は分からないし、煙に巻かれているだけという印象を持つかもしれない。それに、分からないことを分からないまま「なんだか、すげーな!」と面白がれるような人は、そもそも入門書なんて読まずに言語仕様の書かれたマニュアルを手にしてもいいわけである。

そして、そのような short or rapid introduction は、僕らのようなプロ向けとも言えない。簡単に言って、プログラミング言語の違いは syntax の違いや semantics の違いと言えるが、そうした雑な導入部で語られるのは、Python のブロックはインデントで指定するとか、行コメントは # を使うといった syntax だけであり、こんな(プログラミング言語論の観点で言えば)方言ていどの知識を得ただけでプログラムを書けるわけではないからだ。エンジニアとしてわざわざ一冊の解説書を手に取ったのであれば、そんな数行で終えられるような説明を期待しているわけではなく、実際には semantics つまり括弧やブレースで変数やリテラルをグルーピングすると、配列として扱われるのか、それともタプルやディクショナリとなるのかということが知りたいわけだし、catch できる例外にはどういう種類があるのかを知りたいわけである。そして、そういうことは冒頭の1章で書かれていると期待なんてしないし、そこで語ることでもなかろう。よって、大半のプロは冒頭の「ひとめぐり」なんて華麗にスルーするのが常道だろうと思う。

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