Scribble at 2021-07-07 09:31:57 Last modified: 2021-07-07 09:32:40

テレビに医師が、しかも Zoom などを使って医療現場からそのまま登場する機会が増えたせいか、医師の風貌をじっくり眺められるようになった。毎年の健康診断とか、あるいは歯科医院へ通ったときも、確かに何分かは間近に医師と言葉を交わすのだけれど、医療従事者の多くは新型コロナウイルス感染症が流行するよりも前から医療現場ではマスクをしている場合があるため、なかなか表情が分からなかったのだ。それに、ここ最近は触診のときだけ僕らの側に向き直るが、それ以外は診察室へ入ったときからずっとモニターを眺めてタイプしながら話をする医師も多い。

そういうわけで、テレビでの様子を眺めていると、やはり老いてやつれた医師には不安を覚える。日本には、高齢者はものをよく知っているという、根拠のない思い込みを刷り込む風習があるようだが、僕は逆に、多くの高齢者は自分の知識をアップデートしていない(いかに善良ではあっても)蒙昧な人々という印象しかない。それは医者についても同じである。こういう話をすると、決まって「若い人には先進的な知識や技術があっても、高齢者のような経験がない」というありきたりの反論が帰ってきそうだが、その経験とはつまるところ、医学界として知識が不足しており技術としても未熟だった頃のものではないのか。そういう過去の経験がなんであれ現在の知識や技術と同等に有効であるとわかっていればともかく、実際にはそんなことをきちんと医学であれ哲学であれ土木工学であれ、実証したり論証できた試しはないのである。「経験を積んだ人はものをよく知っている(筈だ)」という思い込みが受け継がれているにすぎず、実は制度化された宗教とか学校で教わる思想なんかよりも、こういう土俗的な思い込みの方が凡人にとって強力なフレームだと言える。

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