Scribble at 2023-11-09 08:38:34 Last modified: 2023-11-09 09:11:51

どういうわけか、こういう話ってリバタリアンが大好きだよねぇ。ふだんは池田信夫くんやホリエモンのように「文系」なんて言葉を使っては、経済やビジネスを語ってるくらいのことで自分がまるで「崇高なる理系様」であるかのような態度を見せる。もちろん、リバタリアンというのは南米の経済を馬鹿げた実験的政策で破壊したハイエクがそうだったように、本質的には人間（社会）なんてなんとも思ってないファシストなので、そういう思い上がった性癖みたいなものがもともとあるのだろう。

そして、科学哲学者として言わせてもらえば、リバタリアンが根本的に思想として間違っているのは、合理性と数学の演算とを混同しているという点にある。そして更に、その「合理性」という観念を自律的で普遍的で厳密な概念として把握したり認識したり定式化できると思いこんでいるところにも根本的な錯覚があろう。もちろん、これは古来から多くの哲学者や思想家も陥ったと言える難所だ。合理性という観念の理想的な姿が数学の演算であるといった（それなりに生産性のあった）錯覚に陥ったという点では、ライプニッツですら数え入れても良い。だが自覚したり指摘することが難しい過ちであり、また歴史的な事実として色々な成果を出した錯覚でもあるから、一概に否定できるものでもない。

しかし、この軽薄な記事の筆者と同じ数学者である John Carlos Baez 氏が "Life is not simply a game in disguise. There are no fixed rules, apart from possibly the laws of physics. More importantly, there's no fixed definition of what counts as 'winning'. In fact the whole concept of "winning" doesn't apply, except in very limited realms." (*) と反論するように、合理性と短絡は異なるし、合理性と数学的な演算、そして短絡と数学的な演算も、それぞれ異なるものだ。

(*) https://mathstodon.xyz/@johncarlosbaez/111368641311301123