Scribble at 2022-05-23 10:13:53 Last modified: 2022-05-23 10:22:59

ソフトウェアのバイナリ・ファイルを丁寧にローカルへ保存してる人がいる。やれ WinZIP だの Windows 用の PHP だのと、リリースされてダウンロードするたびにインストールやアーカイブをローカル・マシンに保管している。場合によっては、定期的に DVD-R へ記録してさえいる。確かに、オリジナルのバイナリ・ファイルをリリースしているサイト(配布サーバ)や開発用のリポジトリがクラックされて、全てが改変されてしまったり失われてしまう恐れはあろう。でも、たいていのオープン・ソースのプロジェクトではリポジトリを一定のタイミングでフリーズしてアーカイブしているわけで、サーバがクラッシュしようと誰かに侵入されようと、オリジナルのソース・コードが汚染されて復旧できなくなるなんてことはない。GitHub が使えなくなったくらいで開発が停止してしまうようなプロジェクトや開発ベンダーがあるなら、それはバカの集団というほかにない。ローカルにリポジトリのコピーすらないなんて、そんなの GitHub 上で〈オン書き〉でコーディングしてるようなものだし、ありえないだろう。

そして、そもそもの理屈から言えば、必要なときにバイナリ・ファイル(パッケージ)やインストーラが手に入らないソフトウェアやプログラミング言語なんて、少なくとも仕事に使う理由などなかろう。もしオンラインで PHP のインストーラやソース・コードすら手に入らなくなったら、それは PHP というプログラミング言語が使われなくなって開発もされなくなり、実質的に死んだのと同じだと判断していいだろう。サイバー考古学をやりたいならともかく、ふつうのウェブ・アプリケーション開発のエンジニアに、死んだ言語を使う理由など微塵もない。

よって、アプリケーションや処理系がアップデートするたびにインストーラやパッケージをダウンロードして使い続ければいいだけのことであって、ダウンロードしたインストーラやパッケージをバイナリ・ファイルとしてそのまま残しておく(少なくとも仕事の道具としての)正当な理由など何もない。必要に応じて入手し、必要に応じてアップデートする。それができなくなった時点で、その道具は使えないと判断して捨てるべきなのである。

もちろん、それでも維持し続けるか維持したいバイナリ・ファイルというものもあろう。いまのところ、僕が手元に置いている唯一の例外は、WinAMP だ。既に開発が中止されて、新しいバージョンが出るといわれながらも数年が経過しているため、オンラインでインストーラを入手するならウイルスに感染している可能性を承知のうえで胡散臭いサイトを利用しなくてはならない。よって、僕は「最終版(final)」という名前が付いたインストーラを持っていて、新しいマシンを買うたびに同じインストーラで WinAMP をインストールしている。正直、MP3 のプレイヤーなんて15年以上も前から再生品質が殆ど同じままで向上していないのだ。それに、以前も書いた話だが、元音楽雑誌の編集者としても言えることだが、音質の決め手は MP3 プレイヤーのアプリケーションの性能ではなく、どう考えてもハードウェアだ。同じ MP3 ファイルでも、Android と iPhone とでは明らかに違うし、高額なイヤフォンを使うかどうかでも確実に音質は変わる。元の MP3 をどういうサンプリング・レートでエンコーディングしようと、ハードウェアを変えるほどの劇的な違いは生じないし、WinAMP の最終版がリリースされた2013年頃以降なら、どの MP3 プレイヤーのソフトウェアを使おうと音質なんて殆ど違いはない。

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