Scribble at 2022-04-10 19:33:41 Last modified: unmodified

The claim is the Tanis creatures were killed and entombed on the actual day a giant asteroid struck Earth.

Tanis: Fossil of dinosaur killed in asteroid strike found, scientists claim

何日か前にアマゾンで、生物学の本を物色していた。そこで、例によって素人の自費出版を見つけた。この手のバカはたいてい学界の定説が間違っているというセンセーショナルなタイトルをつけたりするもので、その本も恐竜に関する話はうそばっかりとか、そんな感じのいかにも素人臭い、こう言っては気の毒だが crank の腐臭を漂わせていた。なんでも、恐竜が隕石の衝突をきっかけにして絶滅したというのは大嘘であり、その根拠としては気候が変わるほどの巨大な隕石が衝突したにもかかわらず、隕石によって直に死んだ恐竜の化石が一つも見つからないということらしい。

素人というのは不勉強なまま学者と同じ権威がほしいとか「博士」と呼ばれたいという、クズみたいな自意識に突き動かされて妄言を口走るので、化石というものがどれほど残りにくいかという基本的な知識も想像力もない。隕石の衝突によって直に何かがぶつかって死んだ恐竜が数キロの範囲にどれほどいようと、そこが水中に没したりして体の上から砂や灰が長期間にわたって堆積していくといった、非常に特殊な条件が揃ってこそ、はじめて生物の死骸は化石となって残る。そして、もちろんその間に地震などで破壊されてもいけないだろうし、人間が掘り当てられる深さや高さという範囲に化石が残っていなくてはならない。我々は研究者が探し集めた化石をまとめて図鑑や博物館で見ているせいで、これらが幾らでも手に入ると錯覚するわけだが、こういうことこそ正真正銘の「生存バイアス」というものであろう。

そういう事情がある中で、上記の記事が報じるように、現在では約12kmの隕石が6,600万年前に衝突したという定説があって、その際に足をもぎ取られた恐竜の化石があることが、なぜか『New Yorker』という文芸誌で初めて公表されたという。もちろん、隕石が衝突した前後に別の原因で足をなくして死んだ恐竜の化石である可能性も否定できないが、こういう厳密な評価について素人が本を書いて議論する資格など何もない。

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