Scribble at 2024-01-24 09:57:35 Last modified: 2024-01-24 10:31:18

添付画像

『東大阪市文化財調査報告書1:山畑古墳群1』(東大阪市教育委員会, 1973)

『全国遺跡報告総覧』というサイトでは、全国の埋蔵文化財について発掘調査報告書のデータを集めて公開している。数万件の報告書が PDF で無償公開されているので、いまや考古学を専攻するプロパーや学生にとって無くてはならないサイトだ。必ずしも全ての報告書が PDF で読めるわけではないし、なぜか考古学関連の本で紹介されることが多い有名な遺跡の報告書に限って PDF がなかったりするのだけれど、とにかく半世紀以上にわたって各地で発行されてきた報告書の多くが読めるのはありがたい。特に古代史や考古学に興味を持っているアマチュアの多くは、報告書を数多く収めている大学の出身者であるとは限らないし、大学の図書館で所蔵する書籍を連携して貸し借りしたりコピーして融通していることを知っているとは限らないし、そういうサービスを知っているとしても非常に高額なコストも時間もかかるし(1ページのコピー代が約20円で郵送料もかかる。また著作権法上の制約から全てのページを一度で取り寄せることはできない)、プロパーに比べたら報告書を集めるために桁違いのコストや時間がかかる。もちろん、文化財という共有財産の情報を一部の研究者だけに秘匿したり、一般市民のアクセシビリティが低いままではいけない(発掘調査の原資は、もちろん税金だからだ。なお、学術研究の目的ではなく建設物の建築や土地の造成で遺跡が見つかった場合、工事を行う事業者の一部負担もある。遺跡だと知りつつしれっと建物を立ててしまう土建屋がいまだに多いのは、この発掘調査の費用を負担したり工期が遅れることを嫌がるからだ。てめーの先祖が埋まってるかもしれないのに、罰当たりな連中である)。

ということで、僕も『山畑古墳群1』という報告書の PDF を手に入れている(なお、「2」以降は発行されていない)。もちろん、他にも東大阪市で実施された他の発掘調査でも山畑古墳群の一部の古墳が対象となっている事例が多々あるため、それらも PDF を手に入れているし、周辺の遺跡について発行されている報告書もいただいた。ご承知かと思うが、山畑古墳群がある生駒山西麓を下ったあたりを南北に走る大阪外環状線に沿った区域は、弥生時代から古墳時代にかけては「河内湖」という湖に生駒山から西へ流れる多数の川が形成する扇状地や湖畔があったので、その時代の遺跡が南北に連なって点在している。したがって、山畑古墳群に埋葬されている人々に関連した集落の遺跡である可能性が高い。そもそも、山畑古墳群は墓の遺跡群であって、そこに埋葬されていた人々が生活していた場所ではないのだから、墓だけを取り上げて議論することは(考古学としての遺跡や遺物の分析に特化した観点なら許されても)、歴史学や古代史学という観点から言えば視野の狭い見通しや理解しか得られないだろう。

さて、そうは言っても山畑古墳群という特定の場所にある史跡についての情報を得たり、あるいは公に提供したいという場合に、『山畑古墳群1』のような特定の場所にある特定の埋蔵文化財を扱う調査報告書は基本的な資料として常に重要である。したがって、こういう資料を含めて多くの方に山畑古墳群について知ってもらいたいという趣旨でサイトをつくって公開するわけである。が、この資料そのものは当サイトで公開できるものではない。もちろん、発行した東大阪市教育委員会の著作権があるからだ。法令や条例の文面に著作権はないが、パンフレットや埋蔵文化財の調査報告書などには著作権が設定されているため、この報告書の内容をどうやってご紹介するかは、いまのところ検討中である。

この報告書に限らず、実は『全国遺跡報告総覧』で公開されている PDF の多くは、スマートフォンなどモバイル機器で表示するための解像度が粗いバージョンもあるようだが、解像度の粗いモバイル版ではない方のファイルを表示した場合でも、かなり解像度が低くて文字を判読しにくい報告書が多々ある。この『山畑古墳群1』も、そういう解像度の低いスキャン・データを元にした PDF ファイルであり、テキストを選択してコピーすると文字は拾えるが、OCR の性能もあって不正確な文字しかコピーできない。つまり、この PDF に対してテキスト検索をかけても良好な結果が得られない可能性があるということだ。すると、この PDF から文字起こしでもして、サイトでウェブ・ページとして掲載したり、あるいは復刻版のような PDF を制作したくなるわけだが、もちろんそれは個人的に作成できても、公開すれば著作権法違反である。ということで、もし本当に復刻版のようなものを作成して公開するのがいいと判断したら、ひとまず東大阪市の教育委員会に交渉することとなるだろう。あるいは、学術研究や広く知らしめることが目的の非営利の行為であれば、著作権法で自由に印刷物やウェブ・ページで一部分の引用・掲載が認められているので、重要な箇所だけを抜粋した資料のようなものとして掲載(引用)するかだ。もちろん、ジャック・デリダが「有限責任会社abc」という論文でやったようなパフォーマンスを真似て、実質的に全ての文章を離散的な引用文でカバーしてしまうなんていうイカサマをやるつもりはない(それに、そんなことをする意味もない)。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook