Scribble at 2021-03-18 13:56:37 Last modified: 2021-03-18 20:12:16

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Mastering PHP Design Patterns

PHP のデザイン・パターンについて書かれた本は、Wrox の "Professional PHP Design Pattern" (2009) と php|architect の "php|architect's Guide to PHP Design Patterns" (2005) が手元にあるのだけれど、既にいかにも古いし、PSR などとの関連が整理されているものを読みたいと思っていた。上記の本は、冒頭だけ眺める機会があったため、試しに読んでみた。しかし、PSR については簡単に触れてあるだけで、大した収穫がなかった。というか、Amazon.co.jp ではなく Amazon.com の方で一人だけレビューを書いているが、まさしくレビュアーが評しているとおり、これは下書きレベルの文書だと思う。

何と言っても、冒頭から延々と30ページほど、つまり第一章の全体を使ってすら、デザイン・パターンとは何かという明解な説明が一つも書かれていない。それどころか、オブジェクト指向の多態性という概念について、回りくどい説明がだらだらと続けられてゆき、第一章の終わりになって3ページ足らずの間に、デザイン・パターンの古典的な著作から四つのコンセプトを手短に羅列して終わっている。もちろん、それらのコンセプトは「デザイン・パターン」の種別だが、デザイン・パターンについて説明していないのだから、そんな種別を並べられても読み手が要領を得ないのは当たり前だ。

恐らく、この著者は原稿を書き始めたときはデザイン・パターンについてよく理解していなかったのではないだろうか。通常、このような概説を書く場合は、説明しようとする事柄について一定の(つまり簡潔に説明できる)理解に到達している著者が、そこへ収斂するようなストーリーを展開するのが定石であろう。ところが、この著者はデザイン・パターンと何の関係があるのかないのか説明もせずに、PSR やら多態性やらを脈絡と関係なしに語り始めてしまう。たぶん、それらについて書いていけばデザイン・パターンというコンセプトに〈行き着くであろう〉という見込みだけで書き始めたのではないか(もちろん、それは間違いではない)。筋書き、つまり文章の構成なり見取り図を用意せずに書いているように思える。ところどころに引用される、聞いたこともないプログラマのツイートとかも、あまり論旨を展開するために有効とは思えないし、概して大学のレポートていどという印象しかない。

ということで、第一章を読んだだけだが、これは後の文章を読み進めるに値しないと言わざるを得ない。すると、残念ながら PHP 7 以降の仕様に準拠してデザイン・パターンを解説している本は他にないのだけれど(オライリーから出ている本もあるが、PHP 5 を対象にしている)、それはそれで仕方のないことだ。

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