Scribble at 2023-01-18 16:37:40 Last modified: 2023-01-18 17:21:59

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皮膚組織の分子レベルでの解明が進んだことで、これまでからだを覆う「薄皮」のように思われてきた皮膚には、生命活動にかかわるさまざまな精緻なしくみが備わっていることがわかってきました。21世紀に入ってからの皮膚医学の進展は目覚ましく、毎年のように教科書を書き換えるような発見が相次いでいます。本書は、人体最強の臓器と呼ばれる皮膚の謎に、最新の科学的知見を元に迫ります。

『人体最強の臓器 皮膚のふしぎ 最新科学でわかった万能性』(椛島健治/著、講談社ブルーバックス、2023)

髭に関連して皮膚科学の話題を追いかけているため、ちょうどいい本が出たと思って手に入れた・・・のだが、冒頭で紹介されているシュレーディンガーの言葉といい、かなり Monty Lyman の The Remarkable Life of the Skin (Bantam Press, 2020) を参考にしたのかなと思う。それでも、著者なりに工夫して書かれていて、しかもこの手の分野は半分ていどマーケティングではないかと思える本が多いので、そういうところとも距離を置いている健全さがあって好印象な一冊ではあった。最後に番外として記載されている研究経歴についても、昨今のタイパ馬鹿のロボットみたいな若造とかは「いらない」とか長文ウザいとか言いそうだが、知性ある人間にとっては興味深い内容だ。

さて、本書と同じテーマとして洋書でも片手以上の皮膚科学のテキストにざっと目を通してみたけれど、どうも医療系の話題が多くて萎える写真が多いのはウンザリさせられる。もちろん大学でも同期にアトピーを患っている人がいて気の毒ではあると思ったが、皮膚疾患の写真を集めて見せられると意欲が減退してしまう。かといって、エステやコスメの話題ばかりで芸能人やモデルの写真を並べられても困る。

ていうか、いま落書きを投稿した後でアマゾンを見てたら、Lyman の本って翻訳されてるのか。みすず書房も早川書房みたいになってきてるな。古典の翻訳とかに専念しろよ。あと、皮膚科学の一般書というのは、実は昔からよく出てるみたいなんだよね。特に傳田光洋という人物が数多くの著書を手掛けている。

[追記] ついでに火曜日にジュンク堂で髭や剃刀についての本を物色したときの話を書くと、まず美容とかコスメの棚に行ってみたら、予想通り男性向けの本はなかったし、それどころか理容・美容業界関連の本すらなかった。そこで次に男性ファッションの棚へ行くと、フランス人が書いた髭についての本が1冊だけあった。でも、そこでは替刃式どころか straight razor ですらロクに説明されてはおらず、やはり髭を剃るよりも美しい形に整える(造形して残す)というアプローチで書かれている本だった。道具についての愛着を殆ど感じないものに思えたのが残念だ。他に皮膚科学の棚には美容形成外科の本もあるにはあったが、どちらかと言えば女性の肌についての本が多くて、髭なんて文字はどこにもない。そして、上で書いたように皮膚科学のテキストは大半が病気の話なので、もちろん罹った人を差別する意図はないが、見ていてウンザリさせられるような内容だった。あと、生物学の棚も見てはみたものの、皮膚についての通俗本は何冊かあったけれど、どうも髭について生物学者の関心はないらしく、棚を大量に埋めている出版物と言えば、インチキ生命科学とか左翼的なエコロジーの駄本とか未熟な意識の哲学みたいなものばかりで、どうにも手に取る気がしない。

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