Scribble at 2026-02-13 09:12:29 Last modified: unmodified
「ビジネス・パースンの読書」というテーマでは、それこそダイヤモンドから東洋経済から全国紙や男性雑誌に至るまで、色々なメディアでテーマになっている。そして、プロパーの経営学者に記事を書いてもらったりインタビューしたり、あるいは企業の経営者に取材したりと、それぞれ趣向を凝らしていることも多い。また、色々な企業や組織の中でも、上長が会議や酒席の話題として何か一冊を勧めたり、あるいは弊社でもやってきたことだが社内研修の課題として一冊を指定されたりすることもあろう。ちなみに弊社の役職者を対象とする研修で採用された本は、ドラッカーの『経営者の条件』、コリンズの『ビジョナリー・カンパニー2』、そしてコヴィーの『7つの習慣』などである。鉄板だな。
僕は、今年で現職に就いて20年となるのだが、前職を含めて25年くらいのサラリーマン生活で、部下を持ったことは殆どないため、同僚、あるいは上司である役員以外の誰かに本を勧めたことはない。なので、これは誰かに本を勧める話というよりも、単なる経験談として読んでもらえばよいのだが、それなりに本の選択や読み方での失敗もあったから参考にはなるだろう。
まず、あなたが新卒だろうと経営者だろうと地位や職種に関係なく、企業という組織で働いているのであれば、薄い本でもよいので「会社法」の本は必ず読んでおくべきだと思う。組織、なかんずく営利企業や株式会社というものは、もちろん我が国では法令で認められている法人格をもつ経済活動や契約の主体であり、あなたが左翼だろうとネトウヨだろうとヤクザだろうと関係なく、自分あるいは他人が所属している企業活動の影響なしに生きていくことは殆ど無理だ。思想や信条として資本主義なり自由経済なり法治国家にどれほど異議や反感があろうと、無視することはできないし、異なる意見や信条をもっていればこそ、正確に知ることが望ましい。まさしく「彼を知り己を知れば百戦殆からず」というやつだ。
ただ、どういう本を読むかは各人のもっている経験や知識によって異なるので、一概に薄い岩波新書でいいとか、あるいは江頭のように分厚い基本書がいいなどと言えるものではない。ただ、一般論として言えば、新書だけで済ませるのは逆効果だと思う。1000条に迫るスケールの法令を200ページ足らずに短絡する説明だけでは、偏見や不正確な知識が身につくだけだからだ。なんなら、そういう短絡にはおうおうにして著者のイデオロギーが影響する(どうやってまとめるかという切り口や基準や言葉の選び方そのものが著者の立場に左右されるからだ)ため、実は体系的な分野を新書や文庫本で説明するというのは難しい作業であり、読む側にもそれなりの慎重な読み方が求められる。しかし、だからといって法学部の学生や企業の法務部で働く実務家が手にするような基本書・体系書を、最低でも法学部法律学科で学んだこともない人が手に取るのは、はっきり言って無謀である。したがって、まずは薄い入門書の体裁をした本で、新書ほど雑な記述ではない解説を読むことが望ましいと思う。
僕は、学部は法学部法律学科だったので、もちろん民法や憲法などの勉強は一通りやっていたのだが、会社法は履修していなかった。それに、僕が学部生だったのは1990年代の初めだから、もう30年も前のことであり、それ以降に会社法は大きく変わってきている。というか、そもそも僕が学部生だったころは「会社法」という単独の法令ではなく、株式会社は「商法」の一部(商法旧第2編会社)だったのだ。いま「会社法」として学んでいる独立の法令は2006年に施行されたのである。そういうわけで、ここ最近は会社法の勉強もしているのだけど、まず手に取ったのは『伊藤真の会社法入門〔第2版〕』(2025)だ。手頃な分量で、法令の要点が分かるようになっている。もちろん、入門書なので会社法の規定を何から何までカバーしているわけではないが、最低でも会社とは法律としてどういうものなのかを掴むには十分だ。
それから、他の落書きでも説明したことだが、いわゆる「畑違い」の職種を対象にしている本を読むことは、意外に得るものが多い。たとえば、僕らがセールスの本を読んだり、デザイナーが法務の本を読んだりすることだ。僕はもともとバック・オフィスも制作実務もやってきたし、短期間ではあるが営業の経験もあるが、やはり管掌というものがあるから、他の職種は経験が浅い。そういう事情でも、セールスには独自の発想とか仕事の仕方があるもので、マネジメントに携わっていればなおさら、色々な部署の人々と関わるし、影響を与えるのであるから、それぞれの業務や考え方のスタイルを知っておくことは有益だ。そして、これは何も会社で働くことだけを考えて読む必要はないのであって、自分たちの家庭生活にも応用できることがある。まさしく財務は家計の話にも通じるし、営業だって隣近所やパートナーや子供に対する接し方の参考になる。