2021年08月03日に初出の投稿

Last modified: 2021-08-03

分析力のマネジメント―「情報進化モデル」が意思決定プロセスの革新をもたらす

本日、読了したのは上記の本だった。いま勤めている会社で従事している、たとえば個人情報の管理といったテーマについて参考になる点が幾つかあったのは確かだ。

しかし、ありていに言えば、まず本のタイトルが不適切だと思う。本書はデータの「分析力」なるスキルについての本でもなければ、アナリストという職能のマネジメントについて書かれているわけでもない。企業がもつデータを〈どのように分析するか〉については一言も書かれていないので、もし関心がある方は注意したほうがいいだろう。

中身の大半は情報管理の体制やインフラあるいは社内のカルチャーについて、数多くの点から5つのステップとして企業が「進化」していくという説明をしている。しかし、個々の論点については完全に天下り式にチェック項目や注意点が並べられているだけであり、学術的な根拠や企業での実例などといった裏書きが殆どゼロに等しい。実際、各章の終わりに掲載されている参考文献も数冊にとどまる。もちろん、著者らのプライベートな調査を元にしているなら出どころは限られているわけだが、仮に著者らの所属する SAS Institute が独自に行なった調査であろうと、それらが調査結果として正確かつ妥当であるかどうかは、やはり本として出版する前に公に問うて専門の研究者や学生の吟味を経るべきだとは思う。

それから、SAS Institute のような統計ソフトウェアの開発会社に所属する人々が書いているという素性から言っても、企業の「進化」を測る指標として ERP や情報インフラを重視するというのは仕方のないことだとは思うが、はっきり言って彼らの描いているような「進化」のコースを辿れるのは、一部上場企業で、しかも従業員数が1万人を超えるような規模の会社に限られると思う。弊社のような50人にも満たない企業であっても参考にできる点はあるものの(それをやるのが、僕らのような技術系部長の役目だ)、恐らく書いている当人は自分たちのクライアントである大企業のことしか考えていないだろう。よって、本書に書かれていることを「うちのような業容の会社とは関係ない」と切り捨てるべきでもないとは思うが、かといって、地方の零細企業に就職した新卒がドラッカーを読んだところで簡単には応用できないのと同じで、迂闊に本書に書かれていることを真似るのは危険である。

ともかく、書かれている事項は広範に渡って詳細だが、個々の事項に裏付けとなる事例や学問的な根拠がないという致命的な欠陥があって、常識的に分かるところはいいとしても、それ以外は信用しかねる。

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