Scribble at 2025-03-28 07:33:08 Last modified: 2025-03-28 14:14:15
19日に発売された2025年大阪・関西万博の公式ガイドブックを巡り、絵本作家が製作途中のイラストを掲載されたと交流サイト(SNS)で指摘している問題について、ガイドブックを発行した日本国際博覧会協会の副会長を務める大阪府の吉村洋文知事は27日、「作家の方の大切な著作物であり申し訳ない」と謝罪した。府庁で記者団の取材に答えた。
そのむかし、Softbank の公式サイトでアマナだかどこかのサンプル画像が掲載されたという事故があって、そのときは「ウェブの制作実務にテスト工程というものがそもそもない」という事実に多くの人が驚いたものだった。印刷・出版・広告の業界では、それなりに確立しているはずの校正や納品検査の工程が、ウェブのコンテンツ制作では長らく軽視されてきたのは事実であって、その背景にはウェブのスピード重視だとか、「後から直せる」という錯覚(いちどコンテンツにアクセスしたユーザの大半は、後から修正しようと、二度と同じコンテンツにアクセスなどしない)など、2000年代前半の制作会社や業界について解説していたインチキ・コンサルやチンピラ・マーケティング屋、あるいはウェブ制作会社の「ディレクター」なり経営者ですら、その多くは(たとえビジアキだろうとキノトロープだろうと)未熟な人々であって、本当は MdN やマイナビ出版などから偉そうに業務フローを語る本なんて出版できる知識や経験や技術なんてなかったんだよね。だって、彼らの中にも出版・広告業界の出身者はいたけど、たかが3年や5年ほど働いただけの丁稚みたいなレベルの連中だったわけだし。
PHILSCI.INFO では何度か書いたけれど、既に出版・印刷業界でも地盤沈下は起きているのかもしれない。もちろん、官公庁の案件でもミスは起きる(よくご存知だよね? アクセンチュアさん!)。でも、これはいかにも初歩的すぎるミスだ。僕が35年ほどまえに雑誌の編集者として働いていた神保町の小さな出版社ですら、たとえば写真のライセンスを扱う会社から借りてきたネガの扱いについては厳しいルールがあって、何かの確認用にネガをつまみ上げて裏返しにするだけでも記録用紙に記入させられたくらいだ。なぜなら、ネガを誤って入稿すると「逆版」と呼ばれる左右が逆になった大誤植となるからだ。小さな囲みの風景写真くらいならともかく、芸能人の肖像、しかも表紙なんかだと、当たり前だが取次へ送り出す前に全て回収して印刷しなおしになる。零細の出版社だと、それだけで財務状況が急激に悪化することになる。出版・印刷・広告の業界では、その手のミスは経営に直結するので、ウェブサイトのキー・ビジュアルとは違って事態は致命的なことになるのだ。
ただ、今回の一件で話題となった未完成のイラストと完成したイラストを見たが、ラフの絵をレイアウト上で背景に使うということはあるから、視覚的な取り違えそのものは起きる可能性がある。しかし、だからこそ正解の資料と照らし合わせるような校正や検査の工程が必要なのであって、そのあたりは出版・印刷・広告の業界でマネジメントする側の技能や知識や経験がどのていど劣化しているのかという問題は問えるだろう。