Scribble at 2024-06-09 17:24:00 Last modified: unmodified

アメリカやイギリスやオーストラリアで働いたり暮らしている人の大半は、もちろん YouTube で英会話のチャネルなんて開設していないし、誰かに教えるなんてこともやっていないわけだよ。だって、彼らは現地で働いたり学んだり暮らしていくために英語を習得して使えるようになったわけであって、その英語を習得すること自体を目的にしていたわけじゃないからだよ。こんなの、僕らが日本で暮らしていても当たり前だよね。みんな、日本語を習得してるわけだけど、きみらの中で外国語学校の日本語教師だとか、あるいは中学や高校の国語の先生になりたいなんて人はいるだろうか。殆どいないと思う。だって、みんなが日本語を使えるようになったのは、日本語を誰かに教えるためじゃないからだ。もちろん国語の先生になってもいいけれど、国語の先生になるにしたって、別にそのために日本語を身に着けたわけじゃない。母国語なんだから。それを身に着けないと生きていけないわけだし。

つまり、さきほど久しぶりにスポーツの報道で石川遼君が話題になっていたんだけど、彼が広告塔を勤めた「スピード・ラーニング」っていうインチキ英会話の教材販売ビジネスというのは、僕らが40年以上も前に騙された「睡眠学習法」なんかと同じで、英語で喋ってる音声を聴いてるだけで話せるようになるという、何の根拠もないデタラメなんだよね。で、石川遼君自身が巨大な反面教師になってくれたという皮肉なことでもあるわけだけど、英語が話せるようになったからといって、アメリカで実績を残せるとは限らないという明白な事実を、彼が身をもって示してくれたわけだ。

言葉を扱えるなんてことは、人が生きていったり働いたり学んだり、何かの成果を出したり暮らしているための必要条件と言ってもいい。そして、必要条件は確かに必要条件なんだから大切だけど、必要条件だけでは何の保証もない。だって、アメリカで働くとなると、他のたくさんの移民や留学生と競争だし、もちろん現地のアメリカ人とも競争だ。そうした多くの人々と競争して初めて職を手にしたり、ハーヴァードに入学したり、あるいは現地で暮らしていける。もちろん、大谷翔平君のようにまともに英会話ができなくても、桁違いの実力があればともかく、たいていは凡人だ。ハーヴァード大学に入学てきる程度の凡庸な範囲の才能だけでは、アメリカで職にありつけたり生きていける保証なんてないのだ。

なので、YouTube で出来の悪い連中から拍手喝采を浴びている、英会話ができるというだけのガキの話なんて、あんまり聴いてもしょうがないと思う。だって、彼らはほんとうに帰国子女だろうとなんだろうと英語で話せるっていうだけの凡人なんだから。いや、もしかすると英語で話せるということ以外は、何の才能もない馬鹿な若者ってだけかもしれない。正直なところ、そんな連中に学ぶ暇があるなら、ちゃんとこの国でうまく生活していけるだけの知恵や知識を身につけるほうがいいと思うんだよね。そのうえで、この国を見限って海外に行くなら行くで英語を学べばいいし。何の目的もなくて、ただたんに「英語が話せて格好いい」みたいな自意識しか無いからこそ、英語が話せるってだけの YouTuber とかに騙されて、いつまでたっても実際に話せるようにはならないか、話せるようになったとしても、生活や人生に何の変化もない結果だけに終わるんだよ。たとえば、海外の映画を字幕無しで鑑賞できるようになったからといって、数学を勉強してない人が『ビューティフル・マインド』(ナッシュの伝記映画)を観たって深く理解はできないし、アメリカの歴史を学んでない人が奴隷制度や黒人差別をテーマにした映画を観ても、その理解は非常に安っぽいものにしかならない。英語で聞き取れたとしても、聞き取るほうが未熟者だと、それはただの音声と意味でしかないのだ。

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