2022年06月02日に初出の投稿

Last modified: 2022-06-02

「強力すぎる」「生態系へのダメージが心配」。アース製薬が1月、エサタイプのスズメバチ駆除剤の発売を発表すると、ネット上には「手軽で助かる」といった反応の一方、駆除剤の効果への懸念も相次いだ。賛否両論が相次ぐ様子に「ハチの巣をつついたみたいだ」という反応もあった。

「巣撃滅」は強力すぎる? 対スズメバチ新商品巡り騒動

いちど、何年か前にスズメバチが家に入ってきたことがある。大阪市内の中心街とは言っても、周囲には公園もあれば木をたくさん植えている病院もあるため、地中や木に巣を作る昆虫は、スズメバチに限らずたくさんいるのだろう。寝室にムカデも入ってきたことがある。

で、もちろん刺されると困る。上記の記事によれば「生態系」だの何のと安っぽい他人事の話をしている人も多いようだが、自分の家族が失明したりアナフィラキシー・ショックで死んでも同じことを言い続けられるかどうか、口先だけの暇潰しで意識高い系の雑談を繰り返す人々は、試しに一日のうち1時間でもいいから、そのことだけを考えてみるといい。言い続けられると確信した者だけが、人でなしと呼ばれるのを覚悟して「生態系を守るためなら自分の子供や親が死んでもいい」と Twitter で宣言するといい。そして、そういう人たちが書いていることなら、僕は尊重する。僕がコミットしている哲学とは、要するに人の感情や人の価値観が物事の基準ではないという見識の学問だからだ(*)。でも、僕は〈そういう人々の〉態度や営為は他人事として眺めたり評価できるけれど、自分自身の生活や人生については、逃げも隠れもしないナルシストとして自分の価値観が重要に決まっているので、やはりスズメバチを「生態系」などと言う(一般論としてはともかく、個別の事例では科学的な根拠があるかどうかも定かでない)理由で保護したいなどと安全な場所で喋っている連中は、どのみちロクでもない野郎だと感じる。

ただ、上記のような商品を使いたいかと問われたら、使いたいとは思わない。なぜなら、スズメバチを「樹液の香りでおびき寄せ」るというのは、わざわざスズメバチを呼び込む事だからだ。そして、当たり前だが巣に持ち帰ってもらうのだから、その場では駆除できない。すると、餌をとりにやってきて攻撃性が高くなっている筈のスズメバチに、その場で襲われる危険性がいたずらに増えるだけだ。この商品を置いたことでスズメバチが群れをなしてやってきたら、どうするのか。巣に持ち帰るよりも先に、餌を置いたその場で襲われる恐れがある以上、こんなものを家に置くのは論外だ。ゴキブリのように、嫌でも何でもやってくるならともかく、遠ざけたい(そして「遠ざたい」という欲求の究極が殺すということに他ならない。こんな心情をカマトトぶって隠したところで無意味だ。われわれは害虫を身の回りから根絶したいのである)のに呼び込むとはなにごとか。それとも、屋外の、誰か他人の住居とか公園とか、とにかく自宅とは別の場所に置けるとでも思っているのか。

==========

* 仏教が宗教ではなく思想あるいは哲学に近いと言われたりするのは、これが理由でもある。仏教はキリスト教やイスラム教とは違って、本来は現生利益を完全に無視することが眼目であり、現生利益に固執する一部の政党や宗派は日蓮宗に近い信者のように装っていても仏教徒とは言えない。そして、この理由によって哲学書は、一方で芸能人の意外な愛読書などと持て囃されたりするものの、実際には多くのテロリストの愛読書ともなった事実がある。また、いっときは哲学書を読んで自殺する若者もいたせいで、哲学に関心をもつことは精神疾患の兆候だと見做されたり、「親不孝」だと感じる人がいたのも事実だ。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook