Scribble at 2021-03-06 15:33:00 Last modified: 2021-03-07 09:50:55

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上記は、何年か前にチャトウィンの『パタゴニア』を読んだときの忘備録として、作品に登場する地名を Google Maps でプロットしておいたものだ。こうして眺めると、アンデス山脈の付近に行ったときのエピソードが多いことを伺わせる。そして、こういうのを見ると、僕は彼が〈通り過ぎていった土地〉のことを逆に知りたくなってくる。単なる天の邪鬼かもしれないし、ひょっとすると〈チャトウィンが見過ごした何か〉を見つけて些末な高揚感を得ようなどと邪気があるのかもしれないが、しかし自分で感じているのは、もう少し中立的な動機だ。いくら有能な作家であろうと、経験したことを全て書くわけでもないし、その必要すらない。おそらく通過した土地でも色々とあったとは思うのだが、それはその時の経験という事実だったり、あるいは経験しなかったという事実にすぎない。そして、敢えて言えば、彼が詳細に書いている場所ですら、他人が違う事情で違う時に行けば別の経験になるのは当然だろう。したがって、チャトウィンが書いていない場所について知りたいと思ってみても、それは彼が書いていたらどういう経験だったのかという話を知ることではありえず、それは飽くまでも僕の経験であるから、『パタゴニア』の行間を埋めるようなものではなかろう。しかしそれでも、記載という点で欠落した行程の詳細を知ることには、それが彼が旅した行程を知ることとは違うにせよ、書かれたことがらの脈絡や周辺事情を慮るための有益な材料にはなるはずだ。そもそも、僕の動機は『パタゴニア』という特定の作品の行間を正確に理解することでもなければ、チャトウィンという人物の経験を再現したり理解することでもない。

それはそうと、パタゴニアについて書かれた本というのは、実際には想像するよりも多くない。日本で読めるものに限っても、その数は僅かだ。

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