Scribble at 2024-04-18 12:47:40 Last modified: 2024-04-18 12:49:23

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失業率の低下や経済活動の活発化といったインフレのプラスの側面になり得ることは、回答者によって認識されないのが通常であった。

なぜ我々はインフレを嫌うのか?

上にリンクしたのは、経済関連の論文を要約しているブログ記事である。さて、上記に引用した(取り上げられている論文で語られている)インフレの長所に比べて、通常は「人々がインフレを忌避する主な理由は、個人もしくは全般的な賃金上昇は物価上昇のペースに追いつかないように思われるため、自分の購買力を減じる」という短所の方が強く感じられるので、人々はインフレを嫌がるということらしい。でも、仮に長所と短所が(何の基準でか)釣り合っている、あるいは長所の方が影響力は大きいにもかかわらず、インフレの短所ばかりが過大かつ過剰かつ過敏に評価されているというのが、この論文の趣旨であるとすれば、それは大きな勘違いだろうと思う。その理由は、僕に言わせればかなり明白だ。

まず第一に、インフレの長所を自分自身の生活に関わる実感で得ている人は少ないからだ。会社に勤めているということを「雇用を維持されている」なんて具合に自覚しながら働くサラリーマンなんて、実際には殆どいない。もちろん放っておいても会社が永遠に存続するとか、自分が(終身雇用が事実上の制度として普及している国であろうとなかろうと)明日にでもいきなりクビにされるなんて思ってる人はいない。インフレだろうとデフレだろうと、会社の経営そのものが傾かない限り、自分がマクロ経済なんていう雲を掴むような事情で会社を追われたり雇用を維持されていると思う人は殆どいないのである。

第二に、他方で、人々が感じるインフレの短所は、自分自身の生活に関わる実感から得ているので、わかりやすい。端的に言えば、物価が先に上がるのに給料は上がらないからである。今年の3月に報道された日産の下請法違反スレスレの事例が示すように、インフレなどというマクロ経済を理由にして給与を上げるなんてことができる(そしてせざるを得ない)のは、まさにマクロ経済の影響で事業価値や業績に大きな変化が出る大企業だけである。政府や企業団体や大手マスコミがせっせと給与を上げるように働きかけている相手も、そして給料が上がったかどうかの「実態」として調べているのも、しょせんは一部の大企業や上場企業だけであって、実質的にはあの愉快な「トリクルダウン経済」と呼ばれた、頭のおかしい連中の宗教教義と同じことを思い描いているにすぎない。つまり、「頭を上に引っ張れば足も引っ張り上げられる」という妄想だ。しかし、そんな現象が人類史で起きたことなど一度もないし、学部レベルのミクロ経済学を学んでいさえすれば、そんなことは起きるわけがないと分かるのである。つまり、それを学んでいるはずの経済学者や政府や経済アナリストは、全て何らかの歪んだ利害関係ゆえにデタラメを口にしているということである。

というわけで、賃金を基準に考えたら、インフレによる上昇圧力なんて大多数の人には関係がないし、実際に効果もないのである。なお、これがデフレになったからといって、逆に給料がすぐに下がったりするわけでもない。これらをまとめると、要するに大多数の「企業」、つまり 99.999% の法人事業者で働く者にとってマクロ経済の影響なんてないのだ。そんなことよりも、自分の仕事に関わる商品の売上だとか、安い補習塾に子供を通わせるか、それとも高額な進学塾に通わせるかといった判断の方が現実に大きな影響がある。

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