Scribble at 2022-06-05 14:58:05 Last modified: unmodified

We revalue the stock of New York City commercial office buildings taking into account pandemic-induced cash flow and discount rate effects. We find a 32% decline in office values in 2020 and 28% in the longer-run, the latter representing a $500 billion value destruction.

Work From Home and the Office Real Estate Apocalypse

ニューヨーク市での調査にもとづく結果ではあるが、短期的にはオフィス・ビルの価値が32%も低下して、長期的にも28%は下落すると見込んでいる。そして上記の記事を紹介している Hacker News でもコメントにあるとおり、商業施設として確保した土地に住宅、しかも短期で大きな収入を見込める分譲住宅のマンションが建設される事例が増えているようだ。僕も同じ実感をもっていて、何度か当サイトでも書いているように、僕が務める大阪市北区の堂島(あるいは堂島浜)の近辺では、電通ビルをはじめとして数多くの商業ビルやオフィス・ビルが解体されて、後にはマンションあるいは住宅やホテルを兼ねる商業施設が建設されて、オフィス・ビルが新築される事例など殆どなくなっている。

もちろん、これは堂島地区がオフィス街としての価値を失っているという歴史的あるいは地理的な理由もあるのだろう。堂島は、江戸時代に米市場があったような頃は船で乗り付ける場所として都合が良かったのかもしれないが、現代においては殆ど地理的な利点がない。北にある大阪駅からも歩いて20分ほどかかるし、南にある肥後橋なんてマイナーな駅からでも10分はかかる。京阪の渡辺橋は京阪中之島線の運転本数が少なくて、しかも料金が高いから、関西電力の社員以外に乗ってる人がいないと言われている。阪神高速の新出入橋や土佐堀の出口から出てくる車の少なさを見ても、あるいは堂島周辺の駐車が難しいことを考えても、車での往来も少ないようだ。つまり、ここでビジネスをする利点は「堂島」というブランドくらいしかないわけだが、それも若い世代や他の土地に住む人々には何の意味もなくなっている。既にご紹介した、ビルの名称が変わった旧「新藤田ビル」の「藤田」という名前に歴史的な由来があることを知ってる40代以下のサラリーマンなんて、もう堂島で働く人の中にすらいないだろう。したがって、堂島に事業所を構える意味は殆どない。それにも関わらず、テナント料はいっぱしに高額だし、与信もたいていのビルでは厳しいとあっては、ファイナンスという点でも余計なコストがかかるし、そもそも入居できる保証すらないのだから、企業経営の側からすればメリットがぜんぜんない。

そして、この状況に加えて、そもそもオフィスに来なくてよくなったり、堂島どころかどこにであれオフィスを構える必然性もないとわかってきた企業が増えると、当たり前だが無駄な固定費を劇的に削減できるのだから、事業に大きなマイナスでもない限り入居先なんて物色しなくなるし、広さも立地もさほど重視しなくなる。本社機能など一部を除いて執務エリアを持たない企業が、経営の実態としてトレンドになるとまでは思わないが、着実に日本でも普及するのは確かだろうと思うので、オフィス・ビルの数も減るだろうし、そもそも「オフィス街」という地区が成立する意味についても、(まともなレベルの)社会学とか(まともなレベルの)地理学とか(まともなレベルの)経済学でテーマにするチャンスではなかろうか。

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