Scribble at 2023-03-01 13:49:26 Last modified: 2023-03-01 19:10:10
山口の『長周新聞』(これで「ちょうしゅう」と読む。ほぼ「長州」と同じで、長門と周防の範囲を指す)という地方紙に掲載された、チョムスキーのインタビュー記事である。
しばしばチョムスキーを単純に「左翼」だの「リベラル」だのと切り捨てる人もいて、たとえば山形浩生という翻訳家(というか本業は NRI の開発事業系コンサルだが)は「サイードが反米だから支持されたというのはかなり本当だと思う。たぶん彼は、2022年のウクライナ侵略について、チョムスキーにも増してロシアを支持したはずだと思う」といったコメントを書いているわけだが、僕にはこういう理解は違和感がある。チョムスキーは確かに欧米西側諸国の罪を問うて非難する声明とか著作をたくさん書いていて、もう言語学で金字塔を立てたから研究は諦めたのかと思っているけれど(存命中の人物の著作が岩波文庫の青帯や白帯から出るのは珍しい)、だからといって他の仮想敵国とか陣営を支持しているわけでもないだろう。実際、上で引用したように、ウクライナに対する現在のロシアはチョムスキーから見ても「侵略者」なのである。チョムスキーは、上記のインタビューを通読してもアメリカの話ばかりしていて、ロシアを支持する発言なんて微塵も口にしていない。
ただ、チョムスキーが想定しているパワーポリティクス上の均衡(そして、それゆえにロシアだけでなくアメリカにも力をもつがゆえの「罪」がある)という構図は、現実的ではあるとしても、しょせんは現状を追認したり(そういう均衡が続くと、皮肉なことだが左翼も「反体制」という商売を続けられる)、これまでに起きたことを後からあれこれとほじくり返して文句を言っているにすぎないとも言える。これは、確かにたいていのバカな左翼がやってきた批評のパターンと同じである。