Scribble at 2025-10-27 08:02:04 Last modified: 2025-10-27 14:58:48

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Civitai

昨今のウェブサイトが、いかに大量のデータを(表示するかどうか、あるいはあなたが見るかどうかは関係なく)あらかじめ DOM に展開したり、あるいはスクロールに従って少しずつ見えるなんていう演出のためだけに読み込まれているかは、既に多くのサイトで JavaScript のライブラリや「フレームワーク」の濫用で非常に重いサイトやウェブ・アプリケーションが増えていることでも分かるだろう。この傾向は、徐々にではあるが世界中で広まっていて、逆に最近では「React 疲れ」などという言葉すらある。React のコア・コードどころか ECMAScript の動作原理すら知らないコーダが、何でもかんでも React でフロント・エンドを制作するよう、たいていは無知無教養で未熟なプログラマや SE やディレクターから言いつけられて疲弊する状況を指しており、結局のところコーダであれディレクターであれ、ウェブの制作会社やネット・ベンチャーでコードをいじくり回している人々の浅薄さゆえに生じた自業自得というものだ。

ちなみに、僕がフロント・エンドでコンテンツを prefetch することの異常さに気づいたのは、原理的な話としては Ajax あるいは Comet と呼ばれたこともある reverse Ajax が流行し始めた20年くらい前だったが、その当時は非同期で先行してコンテンツを読み込むことの是非を議論する余地がかろうじてあった。フロント・エンドを設計し実装する側に、一定の選択の余地はあったし、当時の「コーダ」はコアの JavaScript(いわゆる DynamicHTML に相当するDOM操作を含まない部分)を素で書ける、プログラマに近い職能だったからだ。確かに、当サイトでも公開している JavaScript の歴史では、デザイナーが扱えるスクリプト言語として市場に展開しようとしていたのだろう。

でも、現実にはデザイナーの大半は専門学校や芸大で絵を描いていたような人々であって、極端に言えば Illustrator や Photoshop すら使えないような人材だったのだから、アメリカでデザイナーの多くが AcrionScript なども駆使する "developer" であった経緯に比べると、少なくとも日本だけに限って言えば、日本のデザイナーの多くは HTML と CSS を習得してコーディングするのがやっとであった。かつて流行した「ウェブ標準」などという愚かなセールス文句や標語は、つまるところ日本のデザイナーで HTML や CSS をまともにコーディングできる人材が(ユーザビリティやアクセシビリティに準拠する以前の話として)いかに少なかったかという実態を表す言葉でもあった。

そうして、原理的な話としてはともかく、実際に酷い実例が増えてきたなと感じたのは、GMO ペパボの「ムームードメイン」というドメイン管理サービスのサイトが極端に重くなったことに気づいた5年くらい前のことだ。表示されるコンテンツに比べて、prefetch だろうと preload だろうと、裏で読み込んでいるデータ量の多さだけではなく、そもそもページを表示するためだけに利用する道具としては重すぎるライブラリやフレームワークを採用する企業が増えてきた。そして、その極端な例が、上にご紹介している Civitai という画像生成 AI のコミュニティ・サイトだ。僕が自宅で使っているマシンは、Ryzen 7 7700 + 32 RAM + 2 TB SSD + GeForce RTX 5060 Ti というスペックで、もちろん生成 AI をそれなりに動かせるだけのマシンとして購入している。ところが、Civitai にアクセスすると頻繁に画面がブラック・アウトする。ウェブページを表示するためにマシンが異常をきたすなんてことは予想してもいない。確かに、ブラウザ上で OS をエミュレートするとか、太陽系の構造をシミュレートするとか、あるいは最近だと Privateer 社が公開している「Wayfinder」という宇宙デブリの 3D モニタリング・サービスなども重い処理をするが、それは最初から分かっていることだ。

Civitai は生成 AI のユーザが集まってくるだろうから、多少の負荷は仕方のないところだろうとは思うが、現状の Civitai のパフォーマンスは異常だと思う。それに比べて、僕が所持しているようなスペックのマシンでなくても貧弱な性能のノート・パソコンを使うユーザなど、多くの人々がアクセスするような「ムームードメイン」といったサービスのサイトで、ページのレンダリングに10秒以上もかかるような JavaScript のフレームワークを採用するなんて、ちょっと考えられないことだ。もとより、GMO ペパボの前身であるペーパーボーイアンドコーを起業した家入氏が代表だった頃は、主婦や学生の小遣いで利用できるという売り文句でサービスを提供していたため、貧弱なノート・パソコンでも十分にアクセスできることが当然だったはずだ。ユーザが公開するサイトはともかく、そのドメインやレンタル・サーバを運用する企業のサービス・サイトが、e-sport にも使えるスペックのマシンでなければアクセスするにも困るというようでは、本末転倒も甚だしい。

これも、僕が何十年も前から言っていることだが、GMO ペパボのデザイナーやマーケティング担当者、いや熊谷さんでもいいが、彼らは自分たちが提供しているサービスのサイトへ、自分のパソコンでアクセスしたことがあるんだろうか。同じく、Civitai の運営スタッフは、自分たちでサイトへアクセスして使っているのかという気もする。少なくとも、Civitai へアクセスすると、画像生成 AI を使えるスペックのマシンが頻繁にブラック・アウトする。他のサイトへアクセスしていようと、あるいは生成 AI を動かしながら大量の画像を変換処理していようと、こんなブラック・アウトは決して起こらない。だが、他に何のアプリケーションも起動していない状況ですら、Civitai へアクセスすると頻繁に画面が真っ黒になる。もしかして生成 AI に反対する人々が Civitai の JavaScript コードに何かを仕込んでいるのかという疑いすらある。そんなものを解析するほどこっちはセキュリティの実務家として暇でもなんでもないから、特にどうこうするつもりはないが、Civitai の運営者に限らず、このところ JavaScript のフレームワークを無闇に使おうとする人々には猛省を促したいところだ。

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