Scribble at 2020-01-30 13:07:02 Last modified: 2022-09-30 17:40:29

地域の色々なコミュニティにとって図書館がどういう価値や役割をもっているか(もつべきか)という話題は、もちろん昔からある。ただ、それが効果的にコミュニティと連携したり、当該の地域に住んでいる多くの人に知られて共有されているという事例を、残念ながら殆ど聞いたことがない。もちろん、主婦のサークルや児童のクラブ活動で図書館を利用するとか、図書館で開催されるカルチャー・スクールのようなものに老人が集まるという事例は、夥しい数に上っている。でも、僕はそれは地域のコミュニティにとって《図書館が果たすべき役割》としては場当たり的なものでしかないと思う。

恐らく、図書館が書籍や資料の提供場所でありながら、コミュニティの有効なサポートになっていないと思う一つの理由は、多くの図書館では一時的にニーズが増える俗書や小説などを除いては、殆ど一冊ずつしか書籍を所蔵していないということである。したがって、読書会という小規模なコミュニティをサポートするという簡単な用途だけでも、図書館は単なる貸し会議室でしかない。なぜなら、図書館には所蔵が1冊しかないため、読書会の参加者は課題図書を自分で買わなくてはならないからである。では所蔵が1冊しかなくても図書館の書籍を有効に使えるように、読書会ではなく共通の話題を設定して、それぞれの参加者に話題と関連する本を選んで読んできてもらい議論することにすればどうか。しかし、この場合にはコミュニティなり個々のテーマについて議論をリードできる、それなりの見識ある人物が図書館にいなくてはならず、素人が司書と一緒に手探りで議論の場を設定しても殆ど参加者の役には立たないだろう。なぜなら、このようなコミュニティでは読書会とは逆に参加者がそれぞれ違う本を読んでいるため、相手が読んでいる本を自分が読んだ経験なしに相手と議論する可能性が高くなると(そして読書家のコミュニティでもない限り、その可能性は実際に高い)、個々の参加者が読んだことを一つのテーマに回収したり整理できる見識をもった人がリードしない限り、必ずただの床屋談議に終わってしまうからだ。

書籍や資料を保管し運用している図書館には、そういう施設だからこそ書籍を使ったコミュニティを十分にサポートできない限界がある。

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