Scribble at 2026-04-18 21:59:06 Last modified: 2026-04-19 08:29:22

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Strictly Bipolar is essential reading for anyone interested in contemporary views of the self, bipolarity and a deeper understanding of manic-depression.

Strictly Bipolar by Darian Leader

「不安の時代」であった戦後、そして80年代や90年代の「抗鬱薬(ポジティブ思考)の時代」を経て、いまや「双極性障害の時代」なんだそうな。実際に診断例が 4,000 % も増えているというが、これは診断の基準が変更されたり、拡張されたせいであって、これまでは「感情の起伏」と見做されていたていどのことが「精神疾患」扱いになったのだという。それは、果たして治療するべきエラーなのか。それとも「人間性」の一部であろうか。著者はロンドンで精神分析に携わっていて、「ラカン派」という紹介がなされているのだけど、ご承知のようにラカン派というのは非常に多くの団体やアプローチに分裂していて、理解や説明が難しい。そういう事情があるからなのか、たとえば僕の手元にある心理学の小事典(公認心理師という国家資格に対応している)には「ラカン」も「ラカン派」も出てこない。実際、彼はまとまった著作を残しておらず、『エクリ』という雑文集のような著作はニューアカ・ブームの80年代に売れたようだが、残念ながら青学や慶応の学生が田舎娘を一本釣りするための道具として使われていただけで、学術的なインパクトはない(インパクトがあったと言っているのは、当のラカン派の心理学者か、あるいは脳神経科学や認知科学に疎い思想オタクだけだ)。こういうわけで、「ラカン派」と言われただけでは殆ど(心理学のプロパーですら)意味不明だ。なので、そういう不勉強な学生やマスコミ向けの名札は無視して(たとえ当人がアイデンティティの宣言として掲げていようと)、著者が実際に何を議論しているかに着目すべきであろう。

そして、ひととおりの筋を追っていくと、現代精神医学で言われる躁鬱というのは統計的な数値の上がり下がりという機械的な理解に短絡化されていて危険であるという、いわば業界内部の議論をしているように思える。最初にアマゾンで本書を見かけたときは、その「双極性」というタイトルから、たとえばソーシャル・メディアの動向に左右されて、リベラルになったりネトウヨになったりする馬鹿どもの話をしているのかと思ってみたのだが、そういうわけでもない。精神分析や精神医学としてストレートな話題として双極性障害を扱っていて、これはこれで問題があるということは分かるのだが、はっきり言って僕には些末すぎてどうでもいいように思える。プロザックを、マツモトキヨシで売ってるサプリメントか筋トレ用のプロテインのごとく気軽に常用している英米人だけが気にしていればいい話ではないのか。

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