Scribble at 2024-06-03 07:50:32 Last modified: 2024-06-03 08:16:13

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いやぁ・・・いま NHK の「おはよう日本」を観てたんだけど、マスコミの意図的なミスリードというか、無知無教養というか、相変わらずだよなぁ。上の映像は、東京圏に集中している「IT企業」を地方で活性化するという話らしいんだけど、まず明白におかしなところが二つある。

第一に、もちろんここに出てくる「IT企業」だ。「IT企業」と言われてるけど・・・ウェブの制作会社とオープン系の開発会社なんだよな。これ、どちらも「IT企業」じゃないんだよ。高校「情報」の教科書とかではどう教えてるのか知らないけど、IT というのは「情報技術」のことであって、要するにコンピュータ・サイエンスの成果を直に利用して製品やサービスを開発・提供している企業のことだ。したがって、GAFAM は「IT企業」と言えるし、ネットワークやデプロイメントを高度に応用したり自力でアプライアンスを開発している楽天とか Salesforce とかも「IT企業」には入れていいんだろうけど、まさかウェブの制作会社は Adobe 製品の単なるユーザであって、コンピュータ・サイエンスを応用するどころか、代数系や数理論理学を理解できるウェブのデザイナーなんて日本に5人もいないだろう。そして、それはオープン系の開発会社でも同じことなんだよな。不勉強なマスコミの人々からすると、プログラミングなりコーディングしてるから「IT企業」みたいに見えるんだろうけど、たぶんオープン系の開発会社で大学のコンピュータ・サイエンスの学位を持ってる人なんて 1% もいない。つまり、大学院を出てる人どころか、コンピュータ・サイエンスの学部を出てる人すら殆どいないし、なんだったら応用情報技術者の資格を持ってる人だって1割もいないと思うよ。もちろん、僕はここで「だからウェブの制作会社やオープン系の開発会社は程度が低い」なんてことを言いたいわけではない。僕だって、大手広告代理店案件に従事しているウェブのエンジニアだが、コンピュータ・サイエンスの学位はもっていない。単に「IT企業」という言葉が、あまりにも杜撰に使われているという事実を指摘したいだけだ。日本標準産業分類として正確に「インターネット附随サービス業(ソフトウェア業)」などと言えばいいものを、なんで格好をつけて「IT企業」とか言うのか。(ちなみに、今年の4月に日本標準産業分類が改定されたのだが、ウェブの制作事業は独立した業種としては登録されていない。)

そして第二に、この話って東京圏への一極集中を是正するっていう脈絡があるのだけど、既に最初から地方で起業している会社を紹介してるだけなんだよね。そして、何を考えてるのかいまいちわからないのだけど、地方で起業するメリットを何も説明しない。これでは、地方でやりたいやつが勝手にやればいいという話でしかなくなり、そしてそれゆえに大半の人は東京で仕事したいから東京で起業したり就職するのであり、東京に集中するのだということでしかなくなるんだよね。つまり、話が繋がっていないんだよ。

これが、たとえば既存の会社が地方へ移転して問題なく事業を続けているとか、あるいは大手の会社がサテライト・オフィスを地方にたくさん作ってるという話ならわかる。でも、それって例えば GMO が博多にサテライト・オフィスを作ってますなんて話と同じであって、それって10年前の話題なんだよ。コロナ禍が始まるよりも遥かに前の時点で多くの会社がやってたことをなぞってるだけになる(もちろん、そのときも人材が不足しているというのが大きな理由になっていた)。つまり、10年以上も同じことを言い続けてなんにも変わっていないという事実がまずあって、それがどうしてなのかを取材したり報道するなら意味があるけれど、10年前と同じことを、しかもまるで「先進的なこと」であるかのように言い続けていても意味がないんだよな。

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