Scribble at 2022-05-18 10:58:21 Last modified: 2022-05-19 11:05:30

「そうか~?年齢と筋肉痛の関係は、あまりないともされているが・・・」

年を取ると、筋肉痛は遅く出る、というのは、うそ!?

歳をとると、何かトレーニングや運動したあとで筋肉痛となるのが若い頃よりも遅くなると言われたりする。僕もよく聞く話だが、僕は若かろうと今だろうと翌日に痛くなることが多い。年齢は関係ないと思うのだが、どうなんだろうか。

最近は、歳をとると若いときよりも筋肉痛が遅れて起きるというのは「都市伝説」だの「間違い」だのと断言するブログ記事や、NHK の解説ページまで数多く公開されているけれど、例外なくその根拠を示す「科学者」とやらの論文の URL を表記している事例がない。みんな、WELQ レベルの学生からまた聞きで記事を書いているのだろう。こういう場合、いくら書いている内容が正しくても間違っていても、人類の知性にとってはコピペ癖というリスクを引き上げるだけだ。結論が同じなら経緯や前提はどうでもいいというのでは、知性や文化なんて 1mm も向上しない。単に流行の洋服の色や「思想書」とやらと同じであり、グルグルと同じトレンドが数十年ごとに繰り返され、その舞台や素材や手法や話題は変わっても本質的に〈最先端のクズ〉や〈最新のガラクタ〉でしかない。

ということで、まず最初に紹介するのは、川岡臣昭, 小野寺昇, 詫間晋平「遅発性筋肉痛および運動に伴う筋損傷研究における文献的知見-被験者特性の違いに着目して-」(『川崎医療福祉学会誌』, Vol.16 (2007), pp.365-372)だ。300本近い他の論文で報告されている結果をもとにすると、少年と成年とで比較した文献によれば「筋肉痛は,24時間後に両者とも有意に増大したが,年齢による差はみられなかった」という。そして成人と高齢者とで比較できている文献を調べると、「成年の痛みのピークが1日後であるのに対し,高齢者は2日後であった」となっていて、従来のとおり高齢者の方が痛みの出る日数が後になっている。そして、高齢者の方が治るのも遅いため、なおさら若い人よりも「後になって痛い」という印象が残るのだろう。

これに対して、もっと前の2003年の研究成果では「18-22歳の被験者と60-70歳代の被験者に、相対的な強度が等しくなるようにダンベルを設定し、上腕屈筋群に伸張性運動を負荷した後の筋肉痛を比較した。その結果、筋肉痛が発現するタイミングには年齢の違いによる差は見いだせなかった。遅発性筋肉痛が発現するタイミングには年齢差というより個人差が大きく、また、運動の種類や強度,筋肉による違いが大きいことも別の実験から明らかになった」(野坂和則「遅発性筋肉痛のメカニズムとその予防・対処法」, 14580049, 基盤研究(C), 2002-2003)という結果も出ている。つまり、年齢と筋肉痛の起きる時期について、現在も確かな結論はないと言ってよいだろう。

これは、複数の意見が単に出ているからといって安易に両論併記しているわけではない。寧ろ、大多数の記事や文献でお互いに異なる意見を紹介したり評価していないからこそ、どちらとも言えないとしか言いようがないのである。「年齢で違いはない」と主張している方が「年齢によって違う」と論じている他の論文とか巷の一部の意見について、あるいは「年齢によって違う」と主張している方が「年齢で違いはない」と論じている他の論文とか巷の一部の意見について、それぞれ自分たちの得た結果と考察をもとにして反論するというならともかく、そういうことをやっていないのだから、僕は自分の経験によってしか言えない。一般論は言いようがない。

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