Scribble at 2023-04-24 09:48:45 Last modified: 2023-04-24 15:22:46

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卓上走査電子顕微鏡は電機・電子、自動車・機械、化学・薬品を主体としたさまざまな分野で利用が広がっています。研究開発はもちろん、品質管理、物品検査といった製造現場と近接した職種で活用され、近年さらなる作業効率の向上、操作の簡便性、分析や計測性能の強化が求められています。

JCM-7000 NeoScope™ ネオスコープ 卓上走査電子顕微鏡

刃物、特に刃先の造形が繊細かつ鋭利になっている剃刀のメンテナンスでは、刃先を拡大鏡や顕微鏡で確認するという作業が推奨されている。髭を剃る最先端である「切れ刃」なり「小刃」と呼ばれている箇所は、替刃の製造工程で「刃先アール」と呼ばれる厚みにして 0.03 ㎛ から 0.05 ㎛(10万分の3~5mm)という刃の端から約 40 ㎛(100分の4mm)くらいの幅のことである。したがって、市販されている10倍ていどの拡大鏡(ルーペ)ていどでは 0.4 mm の幅が研げているかどうかを肉眼で確かめるという、おおよそ不可能なことをやっている。つまり、そういう倍率の低いルーペで眺めているのは本当の切れ刃ではなく、切れ刃を含めた刃先でしかない。そして、刀背と刃先を接地させて SR を研いでいるときは、刃先の(切れ刃を含めたもっと広い)領域が削られているにすぎないのだが、多くの剃刀マニアどころか研ぎ師ですら、その無駄に大きな範囲の結果だけを見て研げているかどうかを判断してしまうのである。

僕が使っている、100倍と表示されている安物の光学顕微鏡でも細かく見えているわけではない。実際、剃刀の修復やメンテナンスを請け負っている(まともな)研ぎ師や事業者の多くは、電子顕微鏡を導入して作業の結果を検証している。だが、困ったことに「電子顕微鏡」で刃先を観察していると称する人々の中には、はっきり言ってインチキとしか言いようがないものを使っている人もいる。なぜなら、アマゾンや家電量販サイトなどで「電子顕微鏡」として販売されているものは、CCD カメラという電子的なデバイスを使っているというだけの光学顕微鏡にすぎないからだ。本当の「電子顕微鏡」は、まさしく電子線を物体に当てて測定しているので、上記のように非常に低価格の SEM の装置でも50万円はするのがあたりまえである(倍率は、上記の装置だと10倍~10万倍まである)。そして、カールツァイス製だニコン製だと言ってみたところで、顕微鏡の種類や構造や測定原理を理解しようともしていない人々がどれほどの大枚を叩こうとも、彼らが手にしているのは別のものである(偽物だとは言わないし、欠陥品でもないのだろうが)。

かようにして、剃刀のメンテナンスについては、研ぐという作業だけでなく関連する道具や環境についても、本当のところ何の素養も知識も経験もない人々が、少し丁寧に調べるだけでバカでも分かるようなことを思い込みや他人からの伝聞だけで常識や基礎知識であるかのように吹聴している。こういうことが放置されているようでは、traditional wet shaving なんて、骨董品や高額商品を集めるだけの無知な成金の暇潰しだと見做されかねない。

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