Scribble at 2026-03-25 13:24:39 Last modified: unmodified
登場してから多くの批評を受けた OpenAI の "Sora" という動画生成サービスが終了するという。聞くところでは、OpenAI で初めての「サ終」だとか。でも、そもそも本体にしても収益性は全くないわけで、いつまでブームに乗じて投資を集められるのかも不明だ。ひとまず Sora に関連する動向を整理しておく。
OpenAI が Sora を終了した理由は、コスト・需要・戦略の3点で破綻したためだ。Hacker News などのオンライン・コミュニティでは、「当然だ」「残念だ」など賛否が割れている。
破綻の要因を詳しく見ていくと、まず第一に運用コストが極めて高いという事実がある。動画の生成は画像の生成に比べて桁違いに高いコストがかかる。僕が自宅で動画の生成を全くやらないのは、主にこれが理由だ。OpenAI のような規模のリソースがあってすら、1秒の動画を生成するために数十枚の画像を生成しては破棄して再生成というプロセスを繰り返すため、GPUや電力のコストが膨大になる。そして、生産性としても動画の生成は現実的とは言い難い。僕のマシン(Ryzen 7 + 32 GB RAM + GeForce RTX 5060 Ti 16 GB)でテレビ・コマーシャルていどの長さ(15秒)を生成するのに、NTSC くらいの解像度だと30分はかかる。量子化して画質を落としたモデルですら20分はかかるだろう。これでは気軽に作っては微調整してなどという作業を10回も繰り返しているうちに日が暮れてしまう。画像なら、印刷所へ入稿できる 2,894 x 4,093 ピクセルくらいの画像を生成するのにかかる時間は、1枚当たりでせいぜい30秒といったところだろう(アップ・スケールは別のソフトウェアに任せる)。
次に、動画を生成するサービスは収益モデルが成立しないようだ。TikTok のような広告モデルを狙ったらしいが、AI 動画だけのフィード(タイムライン)を誰が見続けるのかという根本的疑問が解消されなかった。多くのユーザーは他人に見せる自己承認欲求や自己顕示欲、あるいは何らかの宣伝やプロパガンダや詐欺目的で SNS へと一方的に投稿するだけで、Sora 内に滞在しない。滞在しているのは暇な情弱であって、そういう連中はたいてい有料会員になんてならない貧乏人だ。
それから既存の意匠権をもつ多くの組織や個人と契約しなくては具体的なキャラや作品を扱えないので、ユーザが自分でキャラクターをデザインしなければならなくなると利用にあたってのハードルが上がり、オンラインの生成サービスを利用している大多数の人々が敬遠してしまう。自分でキャラのデザインができないからこそ、無断でジブリや新海誠のキャラを出してくれる OpenAI のような、或る意味でやんちゃな会社へ期待しているというのに、ホワイト企業のようなことをされては興覚めである。ということで、Sora の停止によって Disney との 10億ドル規模の提携も破談となったようだ。
僕は、動画の生成はリソース、品質、そして用途という色々な点からみて、やはり業界向け(プロ用)に展開するのが限界だろうと思うので、動画を生成する一般向けのサービスが縮小するのは当然だろうと思う。そもそも、この手の技術をどんどん進展させていっても社会的な効用は殆どない。新薬や新しい補助器具の開発など福祉や医療に役立つわけでもないし、他の大半の社会的な課題を解決する役にも立たない。逆に、誰でも AI の動画を作れてしまうとスロップ(粗悪コンテンツ)を大量生産するだけだし、現にプロパガンダやディープ・フェイク、オンライン詐欺など悪用が先行している。