Scribble at 2026-03-28 12:31:10 Last modified: 2026-03-28 21:45:51
暗号理論に基づく秘密計算技術に関して,要素技術から応用までを幅広く解説.詳細で難解な安全性の証明に関する議論を可能な限り避け,初学者でも全体像が把握できるよう配慮した.
先日、京都の丸善で手に入れた。正直なところ、この手の本はコンピュータ・サイエンスの学科で暗号論を専攻する学生、あるいは企業でデータ・サイエンスに携わる実務家などのプロパーが読むものであり、僕らのようなプライバシーマーク制度の事務系の実務家は手に取ったりしないだろうし、いわんやコーダやフロント・エンド・エンジニアといった、僕に言わせれば皮肉なことに「情報・通信システム音痴」としか言いようがない、アルゴリズムや記号遊びのガキなどは興味すら覚えないであろう。
したがって、こういう本の導入部で通俗化を施した解説を延々と続けることは無駄であり無益だと思う。つまり、冒頭に出てくるカードを使った秘密計算の紹介という箇所は必要ない。実際にプライバシーや機密情報の具体的な内容(つまりは「情報」)を秘匿したり保護しつつ、情報の他の価値を利用する仕組みについて、ストレートに理論上の典型的なモデルだとか、あるいは実務上の事例を紹介する方が望ましいだろう。こういうアプローチの本はよく見かけるのだが、なんで一般向けとは思えないような本の冒頭に、すぐ「わかりやすい」と称して通俗的な解説を専門書にまで含めようとするのか。
とは言っても、このような本は貴重である。いまでは、secret sharing 以降の「ナウい」話題を語りたがって中途半端に differential privacy までカバーした雑な本もある中で、基本となる秘密計算のコンセプトを丁寧に解説している著作物は、PET に関心を持っているプライバシー関連法制の(技術的なことに関心がある)実務家であれば、手に取ることをお勧めしたい。もちろんだが、代数系の勉強をしていないと意味不明な内容なので、不足している場合は先に数学の勉強をする必要がある。