Scribble at 2023-09-03 10:01:26 Last modified: unmodified

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Malcolm dares to tackle the risky issues with a refreshing methodology whilst providing real sector leadership. This book is a game changer and an absolute must for business owners and anyone who has responsibility for people and premises or is working in the industry.

Risk It: How to use your intuition to revolutionise risk taking

あまり明白な動機やきっかけはないが、再びビジネス書を手に取る日が増えている。正直、直属の部下はいないし経営やマネジメントとして何か重大な責任を負っているわけでもないが、CPO (chief privacy officer) というのは逆に会社全体のパーソナル・データの運用を監督したり、施策を提案したり、あるいは社内規程を起案するので、役員のような権限はないが会社全体を統制しなくてはいけないという、考えようによってはハードだしやりがいのある仕事でもあろう。しかるにビジネス書に何かを問おうとするのも、そういう点での凡人である僕らにとっては自然でもあり当然でもあり、そして会社全体に及ぼす影響を考えたら必然とすら言えるのかもしれない。ただ、2,000円や3,000円といった単行本を続々と買って読む余裕はないので、あいかわらずアマゾンで数百円で投げ売りされている、こう言っては気の毒だが二流か三流の経営コンサルや営業マンや経営者の書いた本を手に入れて眺めている(たまに古本屋で『HARD THINGS』のように著名人の本を手に入れることもある)。

そして、いま目を通しているのは上記の risk it (Malcolm Tallett, Panoma Press, 2021) だ。多くの人が書いているように、大半のビジネスや大半の業務ではリスクをとる必要がある。たとえ得意先へのルート営業といったサルでもできるような仕事でも、新卒が定年まで同じ実績を積み上げられるという保証などないだろう。その得意先が倒産するかもしれないし、相手側で起きた何らかの事情で契約を打ち切られる可能性だってある。経理の仕事にしても、色々な部署から提出されるべき書類が出てこなかったり、経費の精算を遅れて依頼してくる事例に対応する必要があるかもしれない。もちろん、僕らのような企業の個人情報保護管理者という立場で見ると、企業活動や業務には色々なリスクがあって、それらを特定し、分析・評価して、対策を実行したり提案し、その効果を見極めて報告するという、形式的には簡単に表現できる手順があり、JIS を始めとする業界規範や産業規格(ちなみに JIS は「工業規格」と言っていたが、現在は「産業規格」という呼称に代わっている)で、おおよその様式美みたいなものが定められている。もちろん、こういうことは業種や事業や会社によって実情や工程や実装方法や基準などが異なるので、具体的な手順を規格で決めることはできないし、すべきでもなかろう。こういう規格は、それぞれの会社の事情を無視した形式であることに意味と価値と効用があるのだ。これをまず真っ先に理解しない人は、たとえ CPO や個人情報保護管理者を名乗っていようと、はっきり言って素人と同じである。

さて、この本にもリスクを取り上げた本であればたいてい書かれているような話が出てくる。たとえば、ハインリッヒの法則が典型だろう。"We all make mistakes" は事実だし、仕事に限らず人の人生もまたこういうものであろう。小さな失敗、小さな成功、そして大半は失敗なのか成功なのか分からない、あるいは失敗とも成功とも評価する必要のない所作である(あなたがいま息を吸って吐いたという事実は、失敗だろうか、それとも成功だろうか)。それから、この本の最後に出てくる Nike の "Just Do It" というスローガンの話も、リスクの本にはよく出てくる事例だ。実際、この本も "risk it" という似たようなフレーズをタイトルにしており、risk taking はマネジメントや経営において共通のテーマであろう。

ただ、リスクをとって何事かをやるというのは、Nike の "Just Do It" とニュアンスは違っていると思うので、あまりよい喩え話とは思えない。この "Just Do It" は、日本では似たようなフレーズとして林修氏の「いつやるか? 今でしょ!」があまりにも有名だが、どちらもリスクをとって何かをするというニュアンスではない。Nike の場合は簡単に言えば何かへのチャレンジ全般を表しているし(もちろん「買うならいまだ」と言いたいのではあろうが)、林修氏の場合は受験勉強の話なのだから、やるべきだという前提は最初から決まっている(受験勉強するとガチャを回せなくなるとかナンパに出かけられなくなるなんて「リスク」は考慮されていない)。したがって、何かを始めることによって悪い結果になるというリスクは殆ど想定されていないフレーズなのだ。これに対して、ビジネスにおいては良い結果が得られる保証のある施策なんて殆どない。たとえば福利厚生としてウォーター・サーバを社内へ設置するとコストがかかるし、設置しても利用されないという無駄が起きるかもしれないし、奇妙な考え方をする人によっては「こんなものを置いて長時間会社に居させようというのか」と反感をもつ場合だってあるかもしれない。

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