Scribble at 2023-08-25 08:01:10 Last modified: unmodified
Amazon からアナウンスメントが出て正式にサービスが終了するらしい Honeycode というサービスがあるという。初めて知った。公式サイトを見ると、いわゆる昔の言い方なら「マッシュアップ」というのか、既存のオンライン・サービスを組み合わせて "no coding" で RPA のようなことをやるサービスのようだ。こういうニーズというのは、もちろんある。僕らの会社でも、SFA からメールの配信サービスとかヘルプ・デスクの管理画面にデータを連携させたり、それら自体のビジネス・プロセスに不備や不合理がないかどうかをパフォーマンスとして計測する仕組みに通したり、あるいは途中で情報の不正な扱いが起きないかどうかを個人情報保護法や GDPR の観点でモニタリングしたり、そういうサービスは API の仕様もデータのフォーマットも異なる場合があるし、自前でデータウェアハウスを組む予算やスキルや人員がない多くの会社では、かような unification なり integration を担ってくれるシステムがあると便利だ。
でも、やっぱり市場としての将来性はないんだろうな。第一に、底辺の大多数の企業には、データやサービスを連携させるサービスを導入してまで求められる効率や生産性の向上に見合った売上の予想というインセンティブがない。八百屋がこの手のサービスを導入して売上が2割ていど増えるならともかく、おそらく八百屋はこんなサービスは使わない。いや、八百屋どころか全国に数万人はいると言われている個人事業主のエンジニアやデザイナーだって、こんなサービスを使わないだろう。第二に、逆に大企業は既に既存のサービスを組み合わせる独自のインテグレーションを社内で開発しているだろうし、そもそも組み合わせるべき外部サービスどころか社内で独自のビジネス・プロセスに合わせたエンタープライズ・システムを組み上げているだろうから、こういうサービスは要らないし、社内の機密情報を保護するという理由から言っても使えるわけがないと思う。そして第三に、大企業のようにオリジナルのシステムを組めるわけでもなく、かといって個人事業主のようにそもそもサービスを連携させてまで生産性の向上を求めなくてもいいというわけでもない、Honeycode のようなサービスを導入して活用すれば一定の効用があると思える企業についてだが、おそらく大多数のそういう中小企業では、まず知見もなければ経験もないという事情があって、いまだに RPA やマッシュ・アップという言葉も知らない人が多くいるし、それ以前にそもそもコンピュータやインターネットを事業に活用するという発想が欠落している事業者も多い。