Scribble at 2020-10-13 19:09:38 Last modified: unmodified
僕は学士を法学で授与されたのだが、頻繁に六法全書を買い替えるような法学徒ではなかった。いまでも『法学六法 20』(2020年版、信山社)を久しぶりに買ったくらいだ。とは言え、毎年のように大型書店の六法全書が並ぶ棚は眺めて回っているので、それぞれの六法全書についてアマチュアなりに思うところはある。
上記のレビューで取り上げられている『判例六法』(令和2年版、有斐閣)は、法令の条文だけでなく、判例も取り込まれていて、判例の箇所だけ青い文字で印刷されているという特徴がある。同社からは『ポケット六法』というハンディな(とは言え、既に現代のひ弱な若造では片手で持ち歩くのも大変な分量になっているらしいが)六法全書が出版されているため、よく比較されるようだ。しかし何にせよ、どこの小型六法全書も中身の編集は大変な作業だと思うが、僕も上記の評者と同様にプロダクト・デザインとしては全く承服しかねる品質だと言いたい。
もちろん、そうは言っても、上記で引用した批評は一方で拙速かつ不当な評価だと思う。二色刷りだけでなく枠で特定の文章を囲むのは、視覚障碍者を考慮しているからに他ならないからだ。ブルー・ブラックとブラックの印字色を明瞭に見分けられる人と、そうでない人がいるのである。しかし他方で、『判例六法』を含む小型の六法全書は、僕が老眼になったという事情もあるとは思うが非常に読み辛い紙面だ。
各社には、肥大化する法令(施行令など関連する法令は次々と追加されるし、改正によっても条文の全体が長くなる傾向にある)を前提として、どれだけの法令を収録するのが望ましいのかという点で、或る程度の割り切りが必要だろう。頻繁に参照しない法令については、やはり大型の高額な六法全書へ追い出す必要もある。次に判型という論点を取り上げると、僕は書店で手にした際の感想として、さほど不便を感じない。これは、もちろん僕の手が大きいというだけの理由だから是非を論じる根拠にはならないわけだが、逆に手の小さい若者が現行の小型サイズの六法全書に文句を言う筋合いのものでもないだろうと思う。A6 ていどのサイズであれば、もうこれより小さい判型を要求しても、文字のサイズに限界があるのだし、収録できる法令の数からページ数が増えることを想定すると、逆に分厚くなるという理由で持ちにくくなるのではあるまいか。寧ろ文字サイズを大きくしたり行間を空けて欲しいと思う者からすれば、もう少しだけ判型に余裕をもたせて、文字サイズや行間に再考を促す方が良いのではなかろうか。