Scribble at 2022-06-27 09:09:52 Last modified: 2022-06-27 16:38:30

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通行する人が少ないため知られていない場所だと思うが、ここだけが特別に酷いわけでもない、よくある地下の通路だろう。ここは、フェスティバル・プラザという地下街の北端にあるローソンの脇(渡辺橋南詰の地下に当たる)から地上へ上がるための連絡路だ。西から東へ向かって(つまりは僕が出勤する途中に)撮影している。

御覧のとおり、ここも含めて大阪の地下街や地下通路というのは、もともと川だったところを埋め立てた後に再び地下街や地下鉄を建設した経緯があるとか(長堀通など)、あるいはここのように川の近くに地下通路を作ったとかで、頻繁に水漏れを起こす。そのため、1年を通して通路が濡れていたりするから、非常に歩きにくい。しかも、どういうわけか最初から滑るタイルが敷き詰められているため、革靴やヒールを履いて行き交う勤め人は、地上へ出ても川しかなくて不便という事情もあるが、ここを殆ど利用しない。これは、堂島や中之島で働いている人々の常識に近いと思う。

漏水で濡れていなくても歩くのに困る(というか、危険である)通路、しかも、通った人なら誰でも感じたと思うが、地上へ上がる階段も傾斜が急で足を乗せる1段の面積が非常に狭く、昇るときはともかく降りるときは極めて危険である。たぶん、ハイヒールを履いている女性(男性でもいいが)は、こんな階段は降りられないと思う。

これまで何度か書いている話だが、設計つまりデザインは人殺しの道具でもある。つまり意図していなくても、無知・無教養・無頓着こそが人を殺すのだ。こんなタイルを敷き詰めた通路なんて、濡れいようといまいと滑るのは誰でも想像できる。タイルを床に並べるなんて正気とは思えない。こんな安物は、そもそも壁に貼り付けるものだ。しかも、外壁だと 15cm x 5cm の小さなタイル1枚がマンションの高層階から落下するだけでも大事故となるため、内装の壁、たとえば予算の少ない家のトイレとか、そういうところにだけ使うものだ。公共施設の、しかも床に並べるなど「デザイン犯罪」の典型だ。おそらく大阪市のことだから、予算がない、しかし体裁はなんとか取り繕わないといけないという、いつもの役人根性とやらでデタラメな要求をしたのだろう。そうでなければ、設計する側が勝手に提案したことになるのだから、どう考えても受注した業者に責任がある。

もちろん、コンクリートが剥き出しのままでは通路として完成とはいかないだろう。それなら、こんなものを並べるのではなく、別の安くて滑らない材質のタイルはないのか。そう思って少し調べると、こんな記事がある。

「タイル石材の床が滑るのには理由がある!防滑のススメ!」

http://bell-hill.com/125021252512464/4111979

普通の日本語話者であれば、「滑るのには理由がある」と書かれたら、その言い訳なり事情なり〈正当性〉が書かれているものだと予想するだろう。つまり、滑るのは何らかの理由があってこそ、〈わざと滑るようになっているものなのだ〉という説明が書かれていると想像するものだ。しかし、上記の記事は床が滑る仕組み(メカニズム)を記述しているだけである。もう少し日本人として言葉の勉強をした方がいいだろう。

その他のページを探すと、とにかく目に付くのは滑り止め加工の工事を請け負う業者の広告ページだ。すると、多くの場所でタイルが床に敷き詰められて、滑って困るという事情にある人々が多いという状況を思わせる。すると、ここから考えられるのは、こういう滑るタイルで床を敷き詰めるのが最も安上がりだからこそ、利用者が転倒しようがおかまいなしに導入されているのではないかということだ。デザイナーが無能かどうかもポイントだが、そもそもは施主が利用者のことを最優先に考えて建築物なり建設物を作ろうと考えているかどうかが最も重要なのだろう。どのみち地下街や連絡通路の工事を発注する役人や業者なんて、頭でっかちの(しかし学卒ゆえに未熟な)都市計画論の理屈を振り回しながら、しょせんは体裁が取り繕えるかどうかという基準しかないために、こういうものを延々と作り続ける。税金が使われているとなれば、我々も他人事ではない。

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