Scribble at 2023-10-26 08:16:58 Last modified: 2023-10-26 08:53:25

添付画像

上記は Safari for iOS で表示した Newsweek 日本語版のサイトだ。画面の下7割が広告で占められており、しかもご覧いただいている画面で中央にある青い帯状の「もっと見る」というリンクは、記事の "read more" のリンクではなく、広告のアンカー・テキストである。本家英語版の Newsweek にも広告は掲載されているが、ここまで酷くはない。かつての TechCrunch 日本語版でも言えることだったが、要するに日本ではジャーナリズムがジャニタレや吉本芸人のバラエティー番組と同列の文化的な価値しか無いため、広告を見せられたり個人情報を奪われたりするバーターとしてコンテンツを無償で「楽しんでいる」という、或る意味では文化的な自縄自縛というか、蛇が自分の尻尾を食って飲み込もうとするような愚行が何十年にも渡って続けられている。確かに、その中で偶発的に起こる「ドラマ」を『クライマーズ・ハイ』(横山秀夫)のように脚色することだってあろうし、一部の記者やディレクターに何らかの矜持や意欲や業績があることも事実だろうけど、やはり総じて日本のジャーナリズムは携わる人間の学識が低いし、志もだいたい低い。丸投げだ何だと言われるが、投げている方の NHK や民放や新聞社の人間だって、たいていは修士号すらもってない無知無教養だ。政治家や官僚と一緒にキャバ嬢の自宅で麻薬と避妊薬のケースがあたりかまわず投げ捨てられるような乱交パーティに加わるのが「取材」だと思ってるような手合である。しかるに、そういう連中が発注するウェブサイトの設計が、かようなものになるのは或る種の「道理」というわけである。

碌でも無い集団が「報道」して、碌でも無い集団が「視聴」するという悪循環から抜け出すには、もちろんそうしたインチキなエコ・システムを否定したり無視することしかない。報道機関の内部で『踊る捜査線』の柳葉敏郎ばりに「脱構築」なんてしようとしても非常に難しい。

これは、企業で情報セキュリティだとか IT 全般のリテラシーを高めるにはどうすればいいかという課題に取り組んでいる、僕を始めとする技術系、あるいは knowledge management 関連のシステムを構築しようとしているマネージャであれば、誰でも痛感することだろう。おおむね、サラリーマンとか会社員なんて連中は、会社なり組織の経営とか運営について、実は何の関心もないからだ(というか、管理業務なんて理解せずに営業とかプログラミングだけしたいからこそ、たいていの人間はサラリーマンになるのだろう。これを理解せずに、そのまま「自分の時間」だの「ワーク・ライフ・バランス」だのという妄想だけでフリーランサーやクラウド・ワーカーになっている膨大な数の人々がどうなっているかは、みなさんよくご存知だと思う)。よって、組織や産業を内部から変えるのは非常に難しく、だいたいにおいて変えようとする人物が実際に何か変えられる地位になった時点で、その組織は人事的にも財務的にも手遅れのフェイズに移行していたりするものだ。かといって、いきなり事業本部長に抜擢されたり、あるいは経営コンサル的にトップ・ダウンで何か発令できる地位についたとしても、たいがいの組織はそういうヘリコプター式の改革には殆ど反応しないものであるし、国家官僚が典型であるように、あらゆる手を使って抵抗しようとする。

こういうわけで、現行の報道機関の「有志」なんてものに期待するのは(そういう人々がいるなら気の毒だが)無駄である。唯一の手段は、Newsweek 日本語版を無視するしかない。でも、これをやっていくとキャンセル・カルチャーが陥っている問題と同じく、あらゆるものを拒否することになる。ささいな嘘とかインチキをやってない人間なんて一人もいないわけで、芸能人や政治家がヤクザと付き合っていたり隠し子を作ったり年齢や国籍や学歴を詐称していたからといって、いちいちそのたびに忌避していたのではきりがない。たとえば「整形してるアイドルは追放」なんて事を言い出したら、いまどき小学生ですら整形してオーディションに出ているくらいなのに、日本や韓国にアイドルなんていなくなるだろう。よって、問題は無視したり忌避するための条件をどう決めるか、そして代替の手段があるかどうかという二つの点に絞られる。

もちろん、たいていの場合において Newsweek 日本語版を無視して生活しても何のリスクもないだろう。そこだけで報じられる記事を読んでいなかったという事実だけで、あなたが何かの病気になって死んだり、不当な評価を受けた会社を追い出されたり、あるいは後ろから何か勘違いした奴に刺されるなんてリスクが跳ね上がるなどとは思えないだろう。よって、或るメディアを無視することであなたの財産や生命や人物・個人としてのブランドに悪影響があると想定できる具体的で強力な理由がない限り、あなたはそのメディアを無視するという選択にコミットできるし、コミットするべきでもあろう。だってゴミみたいなリソースにアクセスすること自体が、時間の無駄だからだ。すると、そこで決めた基準を他のメディアにも適用すると、いったいどれだけのメディアが残るだろうか。仮に三つほど残るとして、その残ったメディアを利用するだけだと何か情報源として重大な偏向が生じるとか、何らかの分野に関わる情報が欠落する恐れがあるなら、欠落して困る分野についてはいくらか条件を緩和する必要があるかもしれない。

こうして、僕の場合はスマートフォンでアクセスする新聞サイトは読売新聞と産経新聞だけになった。他の「メディア」と称するサイトは無視しているので、連れ合いが X で共有してくれる場合などを除いては、国内の報道サイトを見ていない。でも、それで何か重大なことを知らないなんてリスクや不安はまったくない。たいてい、そういうことを言ってる連中が「公平な知識」みたいな錯覚に陥っているからだ。いま述べたように、僕は読売と産経のサイトしかアクセスしていないけれど、だからといって即座に僕が「右派」の意見に傾くかというと、そんなことはない。朝日と毎日、それから日経にアクセスしないのは、大半の記事が paywall で読めないからだ。そして、僕は報道については一概に「金を払っていなければアクセスするべきではない」とは言えないと思っているので、購読しているかどうかで報道やメディアに意見する資格があるかどうかが変わるわけではないと言いたい。実際、いまのクズみたいな新聞やテレビなんて、何千万という世帯が購読しているではないか。あるいはコマーシャルを眺めて実質的にテレビ局の運営をサポートしているではないか。それでも、視聴する側に何の見識もなければ報道機関の質や仕事ぶりは零落していくのである。これは一般的な企業のサービス品質や商品の品質にも言えることであり、凡人が入れ替わりで入ったり出ていく組織においては、長期的に言って仕事の質が低下していくのは避けられないのである。なぜなら、教える上司や採用する人事担当者や経営陣の質も落ちていくからだ。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook