Scribble at 2023-03-21 18:43:26 Last modified: 2023-03-21 23:41:53
剃刀には他の刃物とは異なる独特の評価基準があって、その一つが "hanging hair test" だ。これは、動画で解説してくれている人もいるのだが、簡単に言えば切れ刃を上向きにした剃刀の刃に上から(毛先側を持って)髪の毛を垂らし、髪の毛を刃に滑らせるだけで切れるかどうかというテストのことだ。ちゃんと刃がついていれば、髪の毛を滑らせるだけで切れてしまう。なぜなら、ちゃんと刃がついていれば髪の毛が刃に引っかかるからだ。剃刀の刃は、それほど鋭いわけである(*)。
実際、いま修復している途中の straight razor は全く引っかかってくれないが、髭を剃っている替刃式の直刃剃刀(替刃は既に3回ほど使っている ASTRA の DE)で試すと、ちゃんと髪の毛が引っかかってスパンと切れてくれる。特に、僕は腕の産毛が細くて数も少ないので、hanging hair test ではなく腕の産毛を剃ってみるという人も多いわけだが、僕はそれができないので、髪の毛を引き抜くのは良し悪しがあろうけれど、僕には hanging hair test の方がいい。
それにしても、上の引用でお分かりのように、そういうテストに合格する剃刀の刃をつける練習には、フリー・マーケットで中古の剃刀を買って研いでみればいいと書いてるのは意外だな。
あと、"3 Things Wrong With the Hanging Hair Test for Razor Sharpness" (https://www.cutthroatclub.eu/blogs/wet-shaving/3-things-wrong-with-the-hanging-hair-test-for-razor-sharpness) という記事があって、hanging hair test は無効だと訴えている。その理由として、hanging hair test は (1) 毛髪の個人差を無視しており、(2) 毛髪と髭の違いを無視しており、(3) テストに合格しなくても剃刀の当て方で剃り味は改善できることを無視している、という三つの点を挙げている。つまりは hanging hair test には(彼は工学の知識があると言っているためか)再現性が低いという致命的な欠陥があるので信用できないということらしい。
しかし、それなら自分で条件を同じにしてテストしてみたのかと言えば、それをしない。ということは、再現性がないと言っておきながら再現性があるのかないのか、そもそも自分でテストしていないということであり、それは工学どころか科学ですらなく、そのへんのガキが書いてるコタツ記事と同じ作り話ではないのか。記録が蓄積されていないだけで、長年に渡って多くの人々が実行して有効かどうかを試してきたことというのは、この手の手工業や伝統工芸の分野なら幾らでもある。工学だ科学だと言うなら、それをちゃんと調べてみてからにすればいいわけである。調べたり試してみないで再現性がないの非科学的だのと言うことの方が妄想の類ではないのか。
(*) ちなみに髪の毛の模式図を眺めていると、一定の割合でキューティクルの解説などに嘘の図を使っているページがある。他人の図を形だけ真似てるコタツ記事の自己証明みたいなものだ。髪は、お椀を重ねるように(つまりタケノコが育つように)毛の構造が積み重なって伸びるのであって、開いた傘状の構造が重なるように伸びるのではない。それは、どちらが毛根の側であるかを全く無視していたり、キューティクルの顕微鏡写真など見たこともない素人が毛髪の拡大図を描くからそうなるのだ。