Scribble at 2021-07-30 15:10:24 Last modified: 2021-07-30 17:56:44

ただいま『トレードオフ』(ケビン・メイニー、2010)を読んでいる。"trade-off" という概念を扱う経済分析の本だと思っていたが、実際に読み始めると〈上質さ〉と〈手軽さ〉のトレード・オフに焦点を絞ったケース・スタディの本だった。

その中で、中盤あたりに中国もしくは中国企業としての Lenovo を紹介する件がある。そして、僕はこの箇所を読みながら、そういえばインドは世界規模の企業を続々と立ち上げて〈いない〉ように思えるのだが、中国よりも先にコンピュータ業界や IT ビジネスへ参入したように見えるのに、どうしてなんだろうかと考えていた。国を単位にして雑に物事を比較するべきではないと直前の落書きで論じておきながらも、僕にはこういう印象がどうも拭えない。日本や韓国の後を追い出したはいいけれど、インドは世界規模のビジネスを展開するという点で中国に先を越されてしまった。インドに HUAWEI のような企業はない。かろうじて Tata Consultancy Services を初めとするタタ・グループという大企業はあるが、恐らく HUAWEI ほどの知名度は全くないだろう。インドのコンピュータ産業や IT 関連の企業と言えば、日本人の僕がヒアリングしていてすら、相変わらずクソみたいな英語を喋る安物のカスタマー・サービス代行会社というイメージしか無い。

人口という点ではインドも中国も約14億人前後と殆ど同じであり、確率だけで言えば、インドから有能な人材がどんどん出てくる可能性は中国と同じくらいある。しかし、中国は出自に関係なく国内に現れた有能な人物を国家が後押しできるのに対して、カースト制という下方圧力があるインドでは文化的な〈足切り〉を行っている(確かに中国でもウイグル人を始めとして、何らかの〈間引き〉をしているのかもしれないが)。これでは、もっと人口が少ない国と比べても、有能な人物が活用される可能性は大して変わらないのではなかろうか。

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