Scribble at 2023-02-20 08:30:37 Last modified: 2023-02-20 14:16:03

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『ヤフオク!』でも、確かに西洋剃刀は出品されている。調べてみれば誰でも分かるように、その多くは理容師が使っていたと思われる中古品であって、国産の美品なら5万円前後、有名な岩崎だ玉鋼だと質が良いと定評がある逸品は数十万円である。

もちろん、daily usage として自分の髭を剃るのに20万円の日本剃刀が必須である人間などいない。実際、世界中の理容師が使っているのは、いまや替刃式の安物である。身だしなみの一環として髭剃りを考えたら、どう考えても最優先はテクニックとスキン・ケアであり、用具は最低限の要件を満たせば、後の選択は正直に言えば趣味の問題でしかない。よって、逆に言えば趣味や投機の対象として剃刀や砥石を集めても、もちろん構わないわけである。僕が言いたいのは、その結果としてオンラインに公表されている道具自慢と、当人のテクニックやスキン・ケアとは何の関係もないということだけだ。

ただ、職人が手作業で制作した道具として考えるに、包丁だろうと剃刀だろうと日本刀だろうと、その工数なり技術力を考慮すれば、妥当な価値とか価格というものはあっていい。どれほど需要がなくなって、殆ど成金の投機対象でしかない岩崎の日本剃刀であろうと、それはそれで単独の価値というものがある。恐らく100年後には博物館に飾られていてもおかしくないものを、それこそ中古だからと言って1,000円でいいなどとは言えない。髭を剃るには値段も品質も過剰だとは言え、それはそれ自体で美術品や骨董品の類なのである。よって、買う人にも文句はないし、売る側にも文句はない。僕は、単に生活の道具としてそんなお金をかける必要があるとは思っていないだけだし、だからといって髭を剃る資格がないと言われる筋合いもなかろうと言いたいだけである。

よって、1,000円もしない replaceable blade straight razor(いわゆる shavette)でも髭を剃るには十分な道具だとは思う。でも、僕はもともとカートリッジ式の安全剃刀のユーザだし、電気シェーバのユーザでもあり、他に髭を剃る適切な方法がないとも思っていない。5分しか時間がなければ電気シェーバが最適だし、僕の技量として深剃りしたいなら、まだまだ安全剃刀の方が上手に手早く深剃りできる(替刃式の直刃剃刀を使い始めて1ヵ月は経つが、いまだに剃り残しが多い)。

ということなので、趣味の対象としては『ヤフオク!』の出品を眺めていたりもする。ただ、いくら素人の出品とは言っても他に出品されている品物もあるわけで、それら他の出品物と比較すれば、最初から1円で出すのはどうかと思う。あまり検索しても見かけないのだが、Solingen で作られたと称する偽物とか岩崎製を騙る中国の贋作とかを疑ってしまう。実際、砥石の出品者が丁寧に解説しているように、砥石でも偽物が数多く出回っているらしいので、どうも『ヤフオク!』で万を超える品物は買うのを躊躇う。Carl Herder の Quo Vadis ブランドで作られた剃刀なんて、ごく普通の中古品でも2万円はしてもいいわけで、いくらオークションだからといって千数百円で出品されては逆に怪しいと思ってしまう。

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