Scribble at 2023-08-14 09:29:57 Last modified: 2023-08-14 09:31:29

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プライバシ保護データ利用技術 (Privacy Preserving Data Utilization Technology)

日本では PET (privacy enhancement technology) という分野は非常に狭いコミュニティであり、その大半は学術研究者というよりも IT ゼネコンの技術者で占められている。既に東大を退官されている中川裕志氏が勁草書房から出した『プライバシー保護入門: 法制度と数理的基礎』(2016)、佐久間淳氏の『データ解析におけるプライバシー保護』(講談社、機械学習プロフェッショナルシリーズ、2016)、そして Emam and Arbuckle の『データ匿名化手法 ―ヘルスデータ事例に学ぶ個人情報保護』(オライリー・ジャパン、2015)、あとは具体的な技法として『ハッカーの学校 個人情報調査の教科書』(IPUSIRON、データ・ハウス、2015)が知られているけれど、これらは2015年から2016年にかけて出ている。つまり、Apple が「差分プライバシー」を buzzword として振り回し始めた頃だ。もともと、これは Microsoft Research に在籍していた頃の Cynthia Dwork らが2006年に発表した論文をきっかけに着目されるようになった概念で(つまり、元になるアイデアはもっと昔からあった)、要するに Apple が自社のオリジナルなテクノロジーであるかのようなデマをばらまき始めるよりも10年以上前から議論されてきたわけである。こういう事例でもわかるように、先進的な業績としてとりわけ企業が宣伝する技術だとかエンジニアというのは、マスコミに騒がれているだけなら、それはたいてい学術研究の成果を10年くらい遅れて使いまわしているだけのコピペ野郎による応用(格好をつけて「コンセプトの実装」などと言ったりするが)であって、ぜんぜんクリエーティブでもイノベーションでもないのである。

というわけで、日本でも学術研究のコミュニティでは PET が細々と扱われてきたのだけれど、上の Google Groups でもわかるように、ちょうど Apple が PET の概念を広告に使い始めるのと入れ替わるように日本ではメッセージのやりとりが失速し、この Google Group も実質的には休止となっている。

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