Scribble at 2025-12-05 09:37:18 Last modified: 2025-12-05 11:49:43

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iPhone X以来のデザイン革新がもたらされたと話題を集めたiPhone Airでしたが、いざ蓋を開けてみると、中古再販価格のパフォーマンスはiPhone17シリーズの中でも最低水準で、発売から10週間の時点で44.3%の価値が失われることが明らかになりました。

iPhone Air、中古価格の揮発性も“Air”級だった

まずディスクローズしておくと、僕は iPhone Air のユーザであり、性能について不十分なところはあると思っているが(たとえばスピーカーの性能)、それらは些細なことであり、おおむね満足のゆく製品だと思っている。なので、そういうユーザとして上の記事を評価しているという前提で以下の論評を読んでもらいたい。もちろん iPhone Air のユーザだからといって反射的に罵倒したいわけではないが、このサイトは特定のモデルについて、わざわざ否定的な情報を集めて消費者の印象を助長しているように思う。メディアと称していても、戦前の朝日新聞をはじめとするように、「事実」を報道しているようでいても、それらは都合良く集めてきた情報で作り上げた(いまどきの人々がお好きな言い方を使うと)ナラティヴにすぎないのである。ただの流行語として使ってる人はチャッピーにすら意味を質問していないと思うので教えておくと、"narrative" という言葉は "a way of presenting or understanding a situation or series of events that reflects and promotes a particular point of view or set of values" (Merriam-Webster Dictionary) という意味があり、つまりは事実を正確に伝える報道というよりも、寧ろ「作り話」や「プロパガンダ」というニュアンスの言葉なのだ。したがって、トランプ大統領が一部の報道機関を「プロパガンダだ!」と詰るのは一面において正しいのだが、同じていどに FOX NEWS だってプロバガンダであり、メディアというものはそういう事業なのだという割り切りが、メディア・リテラシーの経済学的・社会学的な基本なのである。これくらいは、そろそろ日本でも義務教育レベルで教えるべきだろう。

さて、長い前置きはともかくとして、iPhone Air の売れ行きが悪いというのは本当だろうし、実際に僕も会社へ出かけるときに列車内で iPhone Air らしきスマートフォンを見かけることはほとんど無い。とは言え、たいていはカバーに入れているから外見で判断するのは殆ど無理である。僕のように、スティーヴ・ジョブズの言葉を守って、カバーへ入れずにそのまま iPhone の質感を感じながら扱っている人の方が少ないはずだ(まぁ、そういうフェチの人は少ないのだろう)。そういうわけで、観察というだけでは分からないので、どうしても Apple 関連の情報を扱うサイトやメディアを眺めて、こういう状況を知ることとなる。

ただ、まず第一に iPhone Air の件だけに限った話ではなく言っておくと、或る目的をもって手に入れようとするデバイスなり商品について、それが「売れている」とか「売れていない」ということが、それを手に入れて使うときに大きな影響(とりわけデメリット)があるのかどうかを考えておくことが大切だ。今回はスマートフォンの機種変更というケースだが、それなりに多くの人々が経験することなので、ここで議論することに一定の価値はあろう。まず精密機械なのであるから、使える年数なり耐久性は重要なポイントだろう。機種変更するにあたって、堅牢性がある筐体のモデルを選ぶことは、一つの指標として不自然でも不当でも不合理でもない。なので、再生チタンを使った筐体を採用しているモデルを、僕は iPhone 15 が登場したときから興味をもって眺めていた。ただ、前回の機種変更ではチタンを使った Pro モデルを手に入れるまでの意欲はなかったのである。そうして次の機種変更となり、チタンは Pro モデルでは採用されずに iPhone Air だけの採用となった。原料を確保するのが難しいからだという。ということは、最初から Apple は iPhone Air の筐体を作るだけなら足りると想定していたわけであり、もともと Pro モデルほどには売れないと想定していたと考えるのが妥当だろう。

次に、もちろん最近のスマートフォンでは多くの人が関心をもつカメラなのだが、僕は殆ど興味がない。必要最低限の機能さえあればいいというくらいにしか思っていないので、カメラが全く無いのは困るが(それだと QR コードを使った色々な手続きがとれなくなる。MFA アプリすら使えなくなる)、はっきり言えば撮影して画像を保存できさえすればいいというていどの価値しか置いていない。なので、他のモデルでいくらカメラの性能を言われても、少なくとも僕には全く響かないし、他人が LEICA の機構を搭載したスマートフォンを持っていようと、それで撮影技能やセンスが向上するわけでもないことを知っている(実際、僕は前職で並河萬里氏の弟子だった人物と一緒にメディア配信会社で働いていたことがあるが、彼は3万円ていどのデジカメでも素晴らしい写真を撮っていたし、それを Photoshop で丁寧にレタッチする技量もあった。それは、ボディとレンズなどを合計すると80万円もする Nikon のデジタル一眼で撮影していたアマチュアと比べたら、明らかにデバイスの値段は関係ないという冷徹な事実を教えてくれた)。必要最低限の機能さえあればなんとかなるという実感が僕にはあるからだ。

それ以外にも幾つかの比較要素はあるだろうが、小さなコンピュータとして考えると、iPhone Air とそれ以外のモデルに、論理的な観点で本質的な違いはない。物理的には、筐体に組み込んである基盤などの構造や材質などに色々な違いはあると思うが、それらは不良品でもない限り、他のモデルと比べて半分の年数しか使えないなどという代物でもあるまい。そしてデバイスの中身である iOS が動作するプラットフォームとしての違いは殆どないのであるから、仮にいま iPhone Air が即座に製造・販売が中止され終了したとしても、これから数年のあいだ使い続けることに何の憂いもないわけである。発売されてから半年すら経っていないのに、故障した時の部品がないなんてことはなかろう。また、売れていないモデルだからといって iOS のセキュリティ・アップデートの対象から外れるなんてこともない筈である。

ここでは何度も言っていることだが、上の記事を始めとして、Apple 関連のメディアで記事を書いている人々には、かなり「薄さが失敗した」ということしか言おうとしない短絡があり、僕はこれは iPhone Air のユーザであるという点を差し引いても(つまり僕が iPhone 17 Pro のユーザだったとしても)かなり一面的な評価に見えてしまう。確かに iPhone Air が薄い筐体で動作させるために色々な工夫を詰め込んでいるデバイスであることは事実だし、それだけで購入する理由として弱いのかもしれないが、それ以外の理由で購入するユーザもおり、そしてその理由によって満足しているユーザもいるのである。だって、なんだかんだ言ってもサイズが大きくなっているだけ、僕が使っていた iPhone 15 と比べて重量は対して変わらないような実感があるし、薄い薄いとは言われても、正直なところ驚くような実感はない。これが iPhone 15 の半分くらいの薄さなら驚くかもしれないが、たかだか 2 mm ほど(7.8 mm -> 5.6 mm)薄くなったからといって驚くには値しない。

あと最後に、幾つかの記事では指摘されているが、もし Apple が iPhone 13 mini や iPhone SE のユーザを取り込むつもりで iPhone Air を作ったのであれば、確かにそれはマーケティングなりプロダクト開発の間違いだったと思う。iPhone SE が他のモデルよりも長く使われたり評価されていたのは、どう考えても画面の大きさが理由であり、重量や薄さではないからだ。親指だけでスクリーンの端から端まで届く iPhone SE のようなモデルは扱いやすいと感じる人が多くいて、それが選ばれている理由として大きいのだろうということくらい、少しでも市場調査すれば社会学科の学部生にすら分かるようなことだ。いまとなってはどうでもいいことだが、もし Apple がこのような市場を理解していたうえで、デバイスの選択基準を「サイズ」から「薄さ」に誘導できると思っていたのであれば、それはどうしてなのか。(プロダクト管理という本来の意味での)マーケティングの勉強として、非常に興味深い話である。

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