Scribble at 2023-12-14 08:24:55 Last modified: 2023-12-15 09:03:54

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Civitai: The Home of Open-Source Generative AI

昨年の夏ごろから広く知られるようになった画像生成 AI の Stable Diffusion は、他の AI やモデルがオンラインの有料サービスでしか画像を生成できなかったのに比べて、ローカル・コンピュータで好きな画像を幾らでも生成できる分散モデルが無償でリリースされたことと、画像を生成するための強力なフロント・エンドが登場して一気に普及した感がある。誰でも自分のコンピュータで大量の画像を生成できるようになって、いまでは自治体のポスターや企業のコマーシャルにまで生成された画像や動画が採用されている。もちろん、分散モデルのトレーニングに使われた大量の画像が、(ドイツの大学が研究目的として)無断でスクレイピングされた作品だとか有償画像のサンプルなどであったことから、Stable Diffusion をリリースしている企業や画像の提供に協力したサイトの運営者などが写真の販売企業などから訴えられており、現在もそうした疑わしいデータを元にトレーニングされた分散モデルの利用には多くの批判がある。よって、後発の画像生成 AI サービスは、そうした法的な問題をクリアしたという保証のある画像だけでトレーニングしたモデルを使っていることを明示していたりする。

さて、上に紹介している Civitai.com というサイトは有志が運営しているらしき分散モデルや LoRA などのアーカイブとして、画像生成 AI を取り上げたサイトやブログでは紹介されることが多い。現在でも、いくつかのアドバンテージがあるために利用者は多く、かなり頻繁にサイトが落ちていたり、ページの表示が著しく遅いサイトとしても有名だ。正直、ユーザのフィードバックでも「オンラインでサンプルの画像を生成するなんて負荷のかかる機能を提供するくらいならサーバや回線を増強しろ」というクレームが頻繁にあるのだけれど、運営側はオンラインでのサンプル生成という巨大な負荷がかかる機能をサイトから除去するつもりはないらしい。いまや、素人でも LoRA や分散モデルをダウンロードして自分のパソコンで試せるというのに、なんでそんな機能が必要なのか理解しかねるのだが、それだけユーザの多くがスマートフォンしか持っていないような子供だということなのだろうか。

それから、これも以前に一度は書いた話かもしれないが、このサイトではカタログ式に分散モデルや LoRA などの追加データを一覧表示で紹介している。これはこれでいいのだけれど、その並べ方(ソート)が貧弱で、これもフィードバックのフォーラムに何度もリクエストが出ている。たとえば、アイテムを「古い順番」に並べることすらできないのだから、これはプログラミングのスキルが無いという問題ではなく、何らかの政治的な事情とかマーケティング的な目論見があって、わざと実装しないのだろうとしか思えない(僕らのようなプログラマから言えば、アイテムを古い順番で並べ直すなんて、それこそ「秒で」できるような機能追加だ)。

ただし、古い分散モデルや LoRA を見るにはカタログを延々とスクロールしなくてはいけないかというと、そうでもない。検索のフィルターが実装されたため、何月何日から何月何日のあいだで期間を絞って検索できるようになったからだ(これは検索結果の画面だけで左端にあるフィルターで使える。カタログのページの右端にある似たようなフィルターにはない)。これで、2023年4月から2023年6月のように古い(とは言っても半年前だが)期間で調べられる。なお、Civitai.com は今年の2月下旬から運営されているサイトなので、当たり前だが Stable Diffusion が昨年から普及してきたからといって、昨年のデータというのはない。

さて、こうした色々な事情があるということに加えて、このサイトはコンテンツそのものも批判にさらされている。たとえば、(1) 著作権の侵害(版権もののキャラクターの LoRA が大量にある)、(2) どう見ても幼女としか思えない人物やキャラの LoRA も大量にある。これは、多くの国では児童虐待に通じるため違法である、(3) 出どころのはっきりしないデータでトレーニングされた分散モデルがある、(4) ユーザが投稿する実例の画像に猥褻あるいはいくつかの国で違法となるような画像が大量にあるといった数々の理由だ。これも、ユーザから頻繁に違法な LoRA や幼児としか見えないキャラクターの LoRA を除去するようリクエストが繰り返されているのに運営者は黙殺している。よって、最近では人気のあるクリエイターの一部が Civitai.com でモデルをリリースしなくなり、tensor.art など他のサイトでモデルや LoRA をリリースするようになっている。

Civitai.com が多くのユーザを集めたのは、もともと分散モデルや LoRA を公開するデファクト・スタンダートであった Huggingface の UI があまりにも分かりにくくて、しかも分散モデルや LoRA を投稿しているクリエイターの多くがサンプルの出力画像を添付しないため、事前にどんな画像が出力されるのかまるで分からないという不満があったからだ。なので、カタログ形式に眺められるサイトであれば、はっきり言って何でも良かったようなところがある。でも、いまでは Civitai.com の競合がいくつかあるので、これからは Civitai.com を最初に紹介することはなくなってくるのではないかと思う。ただ、分散モデルにしても LoRA や text inversion にしても、こうしたデータをつくる人は、自分が満足したらもう作り続けたりデータをアップデートしなくなる人も多いため、そういう皮肉な意味で放置された作品が大量に残っているという意味での「資産」が Civitai.com には大量にある。よって、完全に他のサイトへ移行するように促すこともできないという状況にある。

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