Scribble at 2026-02-19 09:52:20 Last modified: 2026-02-19 09:59:03

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# AI (LLMs) as an enhancer of the bottleneck in company

このほど Fortune 誌が掲載した論説が話題となっていて、多くのアメリカ企業の CEO が「生成 AI は生産性の向上や人件費の削減に、殆ど役立っていない」と判断しているようだ。そして、それは昔から言われてきた「生産性のパラドクス」の一つであるという。

「生産性のパラドクス(the paradox of productivity)」あるいは「ソローのパラドクス」とも言うが、これはロバート・ソローが1987年に次のようなことを語ったとされるのが由来だ。「あらゆる現場にコンピュータが利用されるだろう。でも、生産性の統計には反映されない(You can see the computer age everywhere but in the productivity statistics)。」実際、アメリカでは OA などと称して多くの職場にコンピュータが導入されたけれど、生産性は爆発的に伸びるどころか逆に下がってしまったという。そして、今般の AI ブームで多くの企業に生成 AI が採用されているにもかかわらず、AI を業務へ組み込んだ企業の9割以上で、「殆ど効果がない」という結果が出ているという。

もちろん、生成 AI が爆発的に普及し始めたのは、たかだか3年ほど前からであるからして、いまは過渡期にすぎないという反論はできるだろう。そもそも AI を導入している多くの企業、とりわけ大企業や上場企業では、出入り業者の言いなりでクズみたいなエージェントやファイン・チューニングのシステムを、「情シス」などと呼ばれているクルクル・パーのコーディング・ロボット連中がブロイラーの鶏みたいに咥えさせられているのが現状であって、これは昔ながらの SIer や事務機屋のデタラメな囲い込み商法である。それに、妥当なテクノロジーの導入にあたって、生成 AI と自社の業務プロセスとを正確に理解している CIO や CTO なんて、アメリカだろうと日本だろうと殆どいまい。だいたい、日本の上場企業で CIO とか CTO やってる人たちって、東大か慶応くらいは出てるんだろうけど、会社法の勉強してたり、あるいは学部レベルの確率微分方程式とか解けるのかね? したがって、まだ結論を出すには早いという議論もできるだろう。

IT なりコンピュータの導入そのものも、実際には20年や30年の年月がかかっていて、もちろん既に中小企業や個人事業主であろうと、調達・売上・会計などの記録をコクヨのノートに書き留めている人なんて殆どいないだろう。また、街中の小売店ならともかく、グローバル企業としてインターネットを全く使っていないなんて企業もないはずだ。コネチカットにある本社から神戸にある支社へ、航空便の手紙で通達事項を送付してるなんてわけがない。明らかに IT やインターネットの導入によって生産性は向上している。よって、いま多くの企業で起きている課題や問題は、いわゆる「J カーブの谷」として知られている、一時的な停滞が起きているだけだと解釈する経済学者も多い。

また、心理的な話として、あまりにも楽観的な hype が宣伝されたせいで、経営者の多くが逆に現状へ幻滅しているという事実もあるだろう。とにかく、インターネットが普及し始めた頃も似たようなことがあったが、こういうテクノロジーを導入すれば、カスみたいな商材でも「世界中の人に売れる」みたいな妄想を抱く愚かな経営者がたくさんいたものだ。しかし、カスみたいな商材というものは、たとえ世界中の人にウェブで知られようと、世界中の人たちから「カスだ」と判断されるだけでしかないのだ。そういう無知無教養や思慮の欠けた身の程知らずや傲慢さが、企業経営を誤った方向へ導くのだ。

ただ、生成 AI のむやみな投入を再考したほうがよいのは確かだ。次に、現状で指摘されている問題を列挙しておこう。

1. 無価値なアウトプットの量産(ブルシット・タスクの高速化):AIは文章や資料を素早く作成するのに便利だが、誰も読まないレポートを3倍の速さで作成できたとしても、実際の経済的価値は生み出されない。それどころか、作成されるレポートや文書の量や長さが増えることで、吐き出される文書の数と速度が短絡的に生産性の高さであるかのように錯覚され、結果的にゴミクズかどうかを判別するための情報を読むための時間が余計にかかり、組織全体の生産性を逆に低下させることになる。更に最近は AI エージェントの未熟な導入が進んでいて、AIで長大なレポートを作成し、それを別のAIに要約させてまともに検証しないといった、無意味なサイクルを生み出す懸念も指摘されている。そして、そういうことをやるのはたいてい大企業、上場企業の労働組合などで悠々自適に暮らしている連中であり、ケツを拭くのは下請けである。

2. 情報の質の低下と意味の切除(Semantic Ablation):AI が生成する文章は、一見すると綺麗に整っているが、実際には情報のニュアンスや独自性を削ぎ落とす「意味の切除(Semantic ablation)」を引き起こすことが指摘されている。AI は統計的に無難で平均的な言葉を言葉どうしの距離関数の計算だけで選ぼうとするため、専門的な深い洞察や重要な事実が薄まり、中身のない凡庸な人間の書いたプラスチックの殻のような文章になってしまう。その結果、情報のシグナル(意味)に対するノイズの比率が許容できないほど高まり、読む側は「理解したつもりになる」という偽の安心感を抱くだけで、実際には重要な事実を見逃すリスクが高まる。いわゆる「いい感じ(語尾上げ)」のわかりやすい入門書や一般向けの本ばかり読んでいる読書家や読書好きに、学術として業績を上げたり人の役に立つどころか、自分自身にとって意義のある読書をしている人が殆どいないのは、これが理由だ。もちろん、漫画にも優れた作品があるのは知っているけれど、親が子供に「漫画なんて読むな」と言うのは、全く根拠のない話ではないのである。

3. 「生成ファースト、レビューなし」による検証コストの爆発:AIによって個人が成果物を出すスピードは上がるが、その中には低品質で事実確認が不十分な「Workslop(作業のゴミ)」が混ざりやすくなる。というか、たいていは混入する。そして、AI から文書をもらった人物が送信者としてのチェックを怠って大量の情報を誰かに送りつけると、受信者側(同僚やレビューア)がその内容を理解し、間違いがないか事実確認するために膨大な時間を奪われる(もし彼らに、受け取った情報を改めてチェックすべきだという責任感があればの話だが)。これは企業内のテキスト・ベースのシステムに対する「DDoS 攻撃」みたいなものではないのかとまで表現する CEO もいるといいます。

4. 組織の本当のボトルネック(I/O)を悪化させる:企業や組織における業務の遅れは、個人の作業スピード(CPU)ではなく、他部門とのコミュニケーション、合意形成、承認プロセスといった「やり取り(I/O)」にボトルネックがあることが少なくない。AI を使って個人が下書き文書やテスト段階のプログラムを劇的な速さで作成できたとしても、それを確認し、承認し、次の工程に渡す人々のもとに仕事が山積みになるだけだ。つまり、凡庸な人々ですら大量の文書を作れてしまうので、かえって我々のような決裁権者や最高技術者のレビュー待ちという渋滞(キュー)が発生し、プロジェクト全体の進行スピードは向上しないという現象が起きる。もちろん、だからといってこの工程を AI に肩代わりさせるような「全自動化」を提唱している富士通やアクセンチュアが、実際には世界でも有数の血税泥棒であり炎上案件の犯人であるのは、周知のとおりだ。

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