Scribble at 2025-08-04 12:05:39 Last modified: 2025-08-04 13:04:06
約20年くらいのあいだにわたって Happy Hacking Keyboard を使っているユーザの一人として個人的な経験から言えることがあるとすれば、それは「矢印キーのついたモデルが最も使いやすい」ということだ。良いこのみんなは、「ハッカー」気取りで Ctrl + ['/; などというキー・マップでカーソルを動かそうなんてことはやめたほうがよい。
カーソルを Ctrl と ['/; キーとの組み合わせで動かすのは、設計者にしてみれば「合理的」なのだ。だが、かような思考は「あなたの合理性」にすぎず、そしてこういう「合理性」はコンピュータ業界なりネット・ベンチャーの業界に蔓延っているように思う。つまり、視野狭窄で短絡的な価値観や観点だけで妄想した「合理性」によって、他の観点にもとづく「他の合理性」や巨大なリスクを無視したり軽視するという、僕らのような科学哲学者に言わせれば「理系思考」などという優越的な発想(そもそもこれだって勘違いなのだが)でもなんでもない、未熟で愚かな発想だ。実際、博士号を取得していてすら、こういうバカは世界中にいて、自分たちが何かあらゆることを自分の頭だけで考え、アホがよく使う言葉だが「最適解」なるものを導き出せるという、子供じみた思い込みで商品やサービスを考案したり、政策すら提案したりする。
もしかすると、これは単なる愚かさだけではなく何かの障害なのかもしれないから、差別する意図はない。だが、差別すべきでないとしても、人が生きる社会において守ったり尊重するべき価値観や基準を無視して「gifted だから」と言い訳になるほど、われわれ保守思想家、というよりも社会人としての大人は甘くないのである。よって、どういう事情であれ、だめなものはだめだと言い切る責任が、われわれ大人にはある。それを「大人の傲慢」だと言って、若者が乗り越えようとすることは結構だ。ただし、それは業績を出すという結果なしには、それこそ逆に若者の傲慢というものであろう。
そういうわけで、僕はタイプ・ミスで致命的な結果にいたるリスクが大きいと思われる、Ctrl + ;['/ によるカーソルの移動というアイデアは、短絡的な合理性だけで実装された未熟なキー・マッピングだと思う。技術者、とりわけプロとしての技術者にはリスクを低減する職責というものがあり、ミスしようと「面白いプログラム」が作れたらいいなどという発想で短絡的なキー・マッピングを設計されては困る。僕が20年にわたって、HHK Lite 版と HHK Professional 版をどちらも使ってきた感想としては、Professional 版のカーソル移動はあまりにもリスクが大きく、またヒトの指のアフォーダンスから考えても、上下左右という認知的なシグナルに自然な対応関係を持てる指の動きとは思えないという、おそらく認知科学から言っても正当化される理由で、Ctrl を使うカーソル移動は馬鹿げているという結論になる。なので、次に買い替えるときはカーソル・キーがついているモデルでしかありえないし、もし HHK のあらゆるモデルにカーソル・キーがないなら、HHK との付き合いも終わりであろう。
と、こういうことを書いていながら HHK Professional 2 を5年以上も使っている。もちろん、毎日のようにカーソルを動かすときに戸惑うし、たぶん HHK Professional 2 を使い始めてからキーボード1万時間以上(1日の平均で6時間、1年に350日は使っているとして、6 * 350 * 5 = 10,500)は使っているはずだが、結局は慣れていない。