Scribble at 2020-09-23 09:14:26 Last modified: 2020-09-23 09:19:36

現在、会社ではリモート・ワークを推奨していて、大半の社員は出社せずに自宅または作業場所を別に確保している人はそちらで業務に携わっている。このような場合でも、旧来の押印とか書類の受け渡しという作業は発生するため、出社している役員に書類の押印や送付を依頼するといった事例もある。

例えば、取引先へ発注書の原本を郵送する場合に、これまでは書類の記入箇所へ手書きで記入していたのだが、そういう書類への押印が必要だと、結局は自分で記入した書類を会社へ郵送するか持参しないといけない。書類一つで出社するのはリモート・ワークの趣旨に反している。そして、よく考えたら書類なんて実際のところ法的には押印など不要だし、記入個所に手書きで記入する必要もないのだ。実際、相手からフォーマットの注文書をもらうときに、契約の更新とか、いったん解約して再契約するような場合だと、記入箇所の幾つかは最初からタイプされて記載された状態の PDF が送られてきたりする。別に手書きで記入する必要なんてないのである。

更に、現在はオンラインで完結する契約書の作成・締結・保管サービス(弁護士ドットコムの「クラウドサイン」など。SAKURA インターネットも同様のサービスを始めるらしい)がある。もちろん弁護士ドットコムのサービスだから、よもや法的に何か問題があるとも思えない。すると、そういうサービスが成立するということは、押印の必要がないのはもちろん、原本という概念も法的には必須でもなんでもないということである。サーバにあるのはデータだけであって、そこから PDF で出力した文書は全て完全に同一の文書であるから、そのどれか一つだけが原本であると言うことはナンセンスであろう。よって、法的に契約を締結した責任の所在とか法人としての履行義務とかが担保できる限り、こういうサービスが普及すれば、ほぼ契約にかかわる紙の書類のやりとりとか押印というものはなくなるだろう。

もちろん、だからといって上長の承認という手順がなくなるわけではないのだから、承認したという indicator としてデジタルな印章を使うといった慣行は残り、それに対応したオプションの機能は残るかもしれない。しばしば利害関係のある業界の人々は、「ハンコ文化」と言う。庶民が印章を使うようになったのは登録制度が始まった江戸時代以降らしい。明治時代に、いったんはサインへ切り替えようとしたとのことだが、識字率の問題で否定されて、逆に印鑑登録制度へ強化された(なお「印鑑」とはこの登録制度で使われているデータベース、つまり印を鑑みる記録簿のことであり、いわゆるハンコは「印章」と呼ぶのが正しい)。よって、数百年の運用実績があるのだから文化と言ってはいいと思うが、業界や会社によって色々なローカル・ルールがあるらしく、上司に提出する書類では頭を下げるように少し傾けて押印するとか、色々と面倒臭い実態があるようだ。

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