Scribble at 2020-10-26 11:34:50 Last modified: 2020-10-26 12:33:28

個人番号カード(マイナンバー・カード)については、プライバシーなりデジタル・アイデンティティの話題として論説を書こうとは思っているのだが、ひとまず自分自身のカードについて思うところを残しておきたい。

僕は運転免許を取得していない。それに、パスポートも既に失効してしまったため、公的な身分証明書と言えば社会保険のカードしか持っていなかったのである。しかし、写真付きの身分証明書が全くないのでは色々と困るため、住基カードを作って使っていた。もちろん、番号法が成立したことによって、この住基カードは公的な役割としてマイナンバー・カードによってオーバーライドされた。そういう事情で既に発行が終了した住基カードの有効期限が切れる来年までには(有効期限はカードを発行してから10年なので、この期限はカードを発行した時期によって異なる。まだまだ使える人もいるだろう)、僕の事情では住基カードを返納してマイナンバー・カードへ切り替えておかなくてはいけなかったのであった。

そして、詳しい話は書かないが申請を出して、本日の朝に区役所でマイナンバー・カードを受け取ってきた。区役所の窓口(暗証番号を登録するタブレットなどを置いてある専用の窓口)で手続きをしながら、カードを眺めた第一印象は、とにかく印字が薄くて偽造カードっぽさが強いということだった。氏名、住所、生年月日、有効期限(裏面にも氏名と生年月日が印字されている)の全てが薄い。正直、僕の老眼では生年月日や有効期限の数字を読み取り辛い。カードの下端にある臓器提供の意思表示に使う個所は、1.5の老眼鏡をかけていても字を読み取るのが難しいほどだ。こんな小さな個所にどうやって年月日や署名を書くのだろう。それに、こんな小さく書いたら経年劣化ですぐにインクが削れて読み取れなくなると思う。

それから、マイナンバーで何かの手続きをする際に、よく暗証番号を忘れる人がいるという話題を見かける。僕もカードを受領する際に暗証番号を申請したのだが、まず大別して「住民基本台帳」等に使う暗証番号(四桁必須)と「署名用電子証明書」の暗証番号(最小6桁から最大で16桁)がある。ここからして既に違和感が強い。そもそも「番号」とは順番を表すための(数字とは限らない)符号のことであり、実はキャッシュ・カードやマイナンバーに登録して使っている符号を「番号」と呼ぶのは変だ。マイナンバーは人に付番されるのだから「番号」と言って良いが、ここで決めているのは何の順番とも関係なく勝手に作った文字列であり、原理的には他人が作った文字列と一致する可能性がある。

そして、前者の住民基本台帳用の暗証番号だが、これは「券面事項入力補助」とか「利用者証明書用電子証明書」のために別の4桁の暗証番号を別個に設定できる。よって、希望すれば四つの暗証番号を設定できるのだが、役所では住民基本台帳、券面事項入力補助、そして利用者証明書用電子証明書の暗証番号は三つで共通の符号を設定してもよいため、こちらを勧めているようだ。実際、三つを区別して設定する用紙も受け取るのだが、1枚目に渡されるのは三つの用途で一つの暗証番号を設定する用紙であり、どう考えてもバラバラに設定するのは勧めていないようである。

また、窓口でプライベートな話をする必要もないので、僕がプライバシーマークや情報セキュリティの担当者であることなど言わなかったが、区役所の担当者はやたらと暗証番号を簡単にしろと言ってくる。署名用電子証明書の最大16桁で設定する暗証番号にしても、最大の16桁でタブレットに入力すると、「え、こんな長いのを登録するんですか? 6文字あればいいんですよ」などと言われた。企業のプライバシーマーク担当で情報資産管理と開発の最高責任者を拝命したり自認してもいる人間が、なんで最低限の桁で最高機密にあたるカードの暗証番号を登録しなくてはいけないのか。そもそも、こんなものを頻繁に使う機会などないから記憶する必要なんてないわけで、どこかにメモしておけば済む話だ。忘れる以前に、記録していないような人間は、そもそも16桁でも6桁でも暗証番号が分からなくなるリスクは同じだろう。というわけで、英数文字(アルファベットは大文字のみ)で16桁とした。それを用意されたタブレットに入力するのだが、自分で使っているスマートフォンよりもさらにタップを感知しにくい端末らしく、ぜんぜん文字が入っていかない。まるで素人の老人みたいな体裁で入力した。

こうして暗証番号を登録してカードを受け取ったのだが、役所からもらった説明書類を見ると、今度は暗証番号という言葉が全くなくなって、代わりに「パスワード」と書かれている。こんな明白な表記揺れを続けているのでは、利用者が混乱するのは当然だろう。5年前の au じゃあるまいし。それから、マイナンバー・カードを発行してもらった際に受け取った何枚かの説明書類の中に、マイナンバー・カードの申請・発行を勧めるチラシのようなものが混じっていたのだが、区役所にはチラシを消化するノルマでもあるんだろうか。それとも自宅へ持ち帰って、カードを発行してもらった本人の他に誰かへ読んでもらうことを期待して渡しているのだろうか。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook