Scribble at 2021-09-05 10:43:34 Last modified: 2021-09-05 17:06:17

少し読了に時間はかかったが、昨日ようやくハイフェッツとリンスキーの『最前線のリーダーシップ』を読了した。帯だけを見れば何やら定番臭を漂わせているが、はっきり言えばこれも古本屋送りだ。内容が駄目だとは言わないので、時間とお金があれば一読をお勧めしてもいいが、本書の要点は殆ど下記の一文で終わりである。

「リーダーシップが失敗する原因は一つであり、政治、地域社会、企業、非営利セクターのいずれにおいても共通している。それは、責任ある立場の人が、適応課題を技術的問題のように扱ってしまうことである。」(p.49)

なんで失敗の話をしているのかというと、本書はリーダーシップが失敗するケースを(というか殆ど失敗した事例だけを大量に並べて)紹介している本だからだ。そして、リーダーが失敗する理由についても上記の言い方を色々と言い換えているだけに過ぎず、本質的には論文1本に相当する分量(約20ページ前後)で言えることを書籍の分量に引き伸ばしたような印象すらある。もちろん失敗しないように、上記で語られている適応課題と技術的問題の混同が起きないよう、彼らの言い方で表現すれば「バルコニーの上に立って」自らの言動を含めた状況を客観的に眺める工夫が必要らしい。しかし、後で書かれているように、そうして自分が何を言ったり(あるいは言わない)行う(あるいは行わない)かは、全てがアドリブにならざるをえず、前もって台本を書いておくわけにはいかない。

よって、自分を客観的に眺めるという点は分かるが、それ以外は本書を読んでも読まなくても同じである。要するに属人的に当人の人となりでしか解決のしようがないからだ。以前、ハイフェッツが HBS で行っている演習の様子を紹介していた著作(『リーダーシップは教えられる』)にも感じたことだが、どうもアマチュアの演劇論と素人の心理学を組み合わせた未熟な対人関係の「意見」を聞いているような気分になってくる。ハーヴァードの教授だよね? まぁそれだけ経営学というもののレベルが低くて、自分たちでせっせと宣伝するほど「科学的」でもなんでもない証拠なのだろう。

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