Scribble at 2025-08-14 14:26:14 Last modified: 2025-08-14 15:04:19
こういう議論にも一理あるのは分かるのだけれど、得てして実地の知識を優先して理論が後でよいという理屈は、「理論なんてどうだっていい」という優劣の話に陥りがちなんだよね。こういうことを実際に声高に叫ぶのは、それこそ実践だけで済めば楽だというインセンティブがある人々なんだから。
たとえば英会話講師(大半の自称講師は ESL つまり英語教育の訓練を受けていない、ただの「英語が話せる凡人」だったりする)、たとえば塾の講師(もちろん、日本の学習塾で教えているのは、担当科目の博士号すらもっていない、大多数は学部卒か学生だったりする)、あるいは有名企業で働いていたというだけのコンサルなどもそうだ。
こういう連中は、簡単に言えば勉強したくないというだけの理由で目先の課題や自分が扱える範囲の実務というイージーなタスクの習得だけに固執し、そしてその経験や知見だけで他人にものを語ろうとする。これが、智慧や経験における下方圧力になっている(つまり、全員が馬鹿や未熟のままでレベルが上がらない)ことに気づかない人々も、そういう低レベルな話の中だけで飯を食っていけるし、とりあえずクズみたいな会社でなんと定年まで働けるので、実害がないからマクロの悪影響に気づかないわけである。それに、もしかすると自分たちの身の程を思い知るリスクがあるというのに、実地の知識や経験だけで安泰な連中が、そういうマクロな観点なんて勉強するわけもない。
一例を挙げると、僕はメインの開発言語として PHP を使ってきているが、そもそも僕が PHP を習得したのは、前職でウェブサイトのページに使われているテンプレートに埋め込まれた PHP のコードをカスタマイズできる人員が社内にいなかったからだ。そういうわけで、僕は入社したときは Perl のコードを「CGI」と呼ぶことが無知や恥であるという矜持くらいはもっている Perl のプログラマだったのだが(本当だよ)、コードのサンプル集みたいな本を片手に3ヶ月くらいで PHP を習得して仕事に使うようになった。なので、ふだんは基礎や理論から入っていく勉強方法を推奨しているけれど、僕は PHP のマニュアルを1ページめから読んでいって PHP のプロのエンジニアになったわけではない。でも、その後で自分自身のケーパビリティに限界を感じることが多くなり、とりわけ現職に入って広告代理店案件の様々な仕様に対応して開発することが求められるようになると、やはり基礎が大切だと考えて、Zend Certification の試験テキストを購入し、2006年に Zend Certified Engineer の資格を得たわけである。そのときに、資格試験のテキストで体系的な勉強をしたこと、それから更に基礎となるコンピュータ・サイエンスのプログラミング言語論やデータベースの理論などに触れたことで、なんだかんだ言っても20年以上に渡って応用が利くていどのスキルが身についたと思っている。はっきり言って、その当時からパズル的に言語を教えるサイトや資格講座や書籍はたくさんあったけれど、それら通俗的な物書きの人々が現在は何をしているのやら、大学や企業のトップとして名前を見聞きしたことなど一例もない。もちろん、そういう地位につくことだけが「成功」であるわけではないし、そもそも「成功」を求めなくてもいいわけだが、一例も見聞きしたことがないという事実は重いと思う。