Scribble at 2026-01-08 08:02:48 Last modified: 2026-01-08 13:07:34

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本書は、10年以上にわたり採用の最前線で数百社を見てきた著者が、数多くの成功と失敗の事例から導き出した「採用の勝ちパターン」を体系化した決定版です。

『138の事例から導き出された「採用の勝ちパターン」を実現する方法 採用大全』

興味深く参考になる議論が多いので、書店で眺めてすぐに手に入れた・・・というのは嘘で、実は何ヶ月も前から書店で見かけていたのだが、いつ手に入れようかとタイミングを図っていただけである。ちょうど、年末調整で小遣いに余裕ができたのが幸いだった。もちろん、僕は人事の実務家でもなければ、経営学の一部として学んだ知見もない。だが、当サイトではたびたび議論しているように、企業の役職者として人事担当者や経営者や採用部署の上長らの発言や行動を四半世紀くらいに渡って眺めてきているから、それなりに思うことはある。そのうえで言わせてもらえば、本書は一読に値すると思う。

この本で最も高く評価できるのは、もちろん僕が当サイトで述べてきたことと同じスタンスをもって書かれている点である。それはつまり、人材の確保は企業活動の基礎であり、経営者が必ずコミットして自分自身も採用プロセスに何らかの仕方で携わるべき業務だという意見を、僕は著者と共有している。1万人の業容だから社長は採用を人事に任せてよいと思っているからこそ、たいていの大企業は経営陣の預かり知らぬところで不祥事や不正や背任を放置することになるのだ。それが白日のもとにさらされても、自分たちが役職定年で会社を去る頃に土下座一つすればいいと思っているのだろうが、これがアメリカなら株主から訴えられて、退職金どころか弁護士にケツの毛まで引っこ抜かれることになる。日本の経営者は、そういう意味で何から何まで甘いのである。

そして二つ目に、採用・人事という業務において最もネックになるのは、実は人事部の人材であるという点でも、僕と著者は同じ意見だ。人事部が初めて組み立てられるときは、もちろん経営陣が人事部の責任者を採用する。でも、そこで初手を間違えたらどうだろうか。無能な人事部長が更に自分と同じ程度の無能な部下を続々と採用する。ふつう、凡庸なサラリーマンというのは、自分よりも優秀な人材は採用しないしできない(自分より有能な人間の能力には気付けない)からだ。したがって、このような企業は最初から無能が更に無能を集めるという悪循環に陥る。たいていの企業は、そこまで無能が揃うわけではなく、せいぜい凡庸な人々が集まるていどのことになるが、それでも凡庸な人々は簡単に優秀な人材とはならず、どちらかと言えば無能に陥る方が簡単なので、時間が経過すればするほど企業は人事から「腐ってくる」のである。それを、この著者はよく理解していると思う。

それから、本書で使われている「穴」という言葉があるけれど、大企業になればなるほど、この「穴」を「篩(ふるい)」だと錯覚していたりするのが致命的だ。求人広告に不適切で不十分な情報しか掲載していないということを自覚せずに、「その内容で応募してこないなら、そういう人はお断り」だという姿勢で、逆に自分たちが篩にかけて選別していると錯覚してしまうのだ。もちろん、これまではそのような錯覚でも母数が大きかったので、歩留まりを語っていれば良かったのだが、もうそういう時代ではない。

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