Scribble at 2023-03-01 08:50:14 Last modified: 2023-03-01 10:43:32

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包丁研ぎ師 月山

自分で何をどうするかは決めていないのだが、せっかく straight razor を買ったのだから手入れして使えるかどうかは吟味してみたい。そこで、「研ぎ」について調べ始めている。もちろん、西洋剃刀についても色々な人がブログ記事を書いたり動画を公開しているけれど、基本的に権威主義である僕からすると、研ぐどころか剃刀を使い始めて1年なんてペーペーが金にものを言わせて数万のヴィンテージや天然砥石を集めたくらいで、巨匠ヅラしてあれこれとブログに書いてみたり、酷い場合は note なんかに(しかも有料で)剃刀の研ぎ方を掲載していたりする事例があってウンザリさせられる。それに比べて、良質なコンテンツ、もちろん GORO さんを始めとして何十年と剃刀を使ってきた実績があって書いたり話せることを率直に公開してくれている貴重な事例が幾つかというのが実情だ。あたりまえだけど、Yahoo! 知恵袋とかに集まってる回答者なんてクズ揃いだから、検索結果に並ぶだけでゴミだと思って無視するのが肝要だ。こういう「差別」や権威主義こそが、バカげた時間の浪費を減らす知恵というものである。よく剃刀を調べていると、英語でも Occam's Razor という話題について、たいていは高校レベルの哲学の知識も知性という意味での素養もない連中がしたり顔で何か書いているけれど、そういう素人の落書きを徹底して無視することもまた、皮肉なことだがオッカムの剃刀を効率的・効果的に使う秘訣というものだ。「素人が書くものにも何らかの学ぶべきことがある」という仮説は、暇ならコミットしてもいいだろうが、大多数の大人、いわんや学者には不要な仮説である。

ただ、そうは言っても逆に自己流で何十年と続けてきて、知見なり態度が凝り固まってしまっている人だっている。そういう修正が困難で改善したり向上させる意欲もない人物の文章は、確かに何十年に渡る経験や試行錯誤に基づくので見識があるように見えるわけだが、何十年か前に停止してしまった、それこそ遺跡のようなものでしかない。確かに遺跡には埋蔵文化財としての価値があるのは確かだが、結局は現代のわれわれにとって何が教訓であり知恵となるかは、いま生きている我々自身の見識で理解したり解釈したり評価する他にないのである。よって、考古学者を志望していたこともある者として言うのは変かもしれないが、どれほどの時間が経過したものであっても、それが過去の出来事や事実や遺跡・遺物、あるいは思想でも習慣でもいいが、ともかく昔からあるものだという事実だけで価値があるものなんて、実はないのである。

なので、長年の経験や研鑽があってこそ書いたり言えることを教えてくれる事例もありがたいし、いま手に入る道具を使って何をすればいいかを考えたりチャレンジしている事例も参考になる。それは、「お金がかからない」という基準であってもいい。そもそも昔の大半の農民や武士は名倉だ自然砥石だサンドペーパーだと持っていたりしなかったし、それは当時の刀匠や職人についてすら言える。飾り職人の秀さんが人殺しの道具をメンテナンスするために「やっぱり6000番くらいで磨かないと」とか、言ってたはずがないのである。

ただ、「これは」と思うような素晴らしい記事を公開してくれている方の多くは、だいたい3年くらい前を境にブログでも動画でも更新が止まるか極端に回数が減ってしまっている傾向がある。これは、もちろんコロナ禍で理容室へ足を運ぶ人が減って経営が立ち行かなくなって、道具の与太話を書いている場合ではなくなったのかもしれない。あるいは、正直なところ西洋剃刀や日本剃刀のユーザの大半は50代以上の、子供を大学まで行かせたあと自分の小遣いが増えたり、あるいは勤め人なら管理職として時間や心持に余裕ができた(管理職なら気楽になる会社や業種なんて、実はほんの一部なのだが)人々に偏っていると思うので、記事を書いたり道具を扱う意欲そのものが減退したのかもしれないし、不幸にも入院したり呆けたり亡くなってる可能性もあろう。動画サイトでは、クズみたいなガキがいきがって「剃ってみた」なんてクソ動画をばらまいているが、その大半は剃刀なんて普段は使ってもいないと断定してもいいし、そもそもああした動画の大半は単純な「アクセスアップ」や売名目的のパフォーマンスにすぎないので、参考にもならないし剃刀を使うきっかけにもならないだろう。ド田舎の土産物屋に並ぶ玩具の日本刀でチャンバラしてるガキと同じである。

よって、若手と思われる方が書いているブログなど良いものを見つけたらご紹介したいのだけれど(もちろん単に若いというだけでガキだのチン毛がないのと馬鹿にするつもりはないからだ。有能なら、それこそうちの会社でも distinguished developer の称号を譲ってもいい。俺より有能なエンジニアがいれば、だがな)、若手の人々が書くものは、やはりどうしても「スタイリッシュな男のグルーミングについてご紹介するぜ、ここをクリック!」みたいなのばっかなんだよな。あるいは、そこまでいかなくても相当に(俺が言うのも変だが)ナルシシズムしか感じられない文章とか。学校のノートよりも重いものを持ったことがない幽霊みたいに軟弱な手のくせに、三下営業とかの分際で貴族ぶった話を書いては、都内のアーバンライフみたいな調子で剃刀や髭剃りの話を書く。そして、その大半は検索して見つけた他人の話の受け売りやコピペだ。これでは、年配というだけではなく学識もあって、しかも自分がこれから学ぼうとすることを材料工学だ皮膚科学だと調べまくっている僕のような人物が書くものを凌駕することなどできないわけである。

それは、もちろん残念だよ。後の世代の方がバカになっていく民族なんて滅亡する方がいいわけだし。

というわけで、もし30代以下で剃刀について関心をもっている方がいれば、ご紹介しておきたいのが、冒頭でリンクした包丁研ぎ師の人物が運営されているブログだ。剃刀について書かれている記事を読むと分かるように、プロの研ぎ師でありながら、やはり経験がないことや知識が不足していること、それからご自身が専門とする分野でも未熟なところがあれば、それをしっかり書いて是非を簡単には決めないという姿勢だけでも学ぶに値する。結局、剃刀だろうと日本刀だろうと爪切りだろうと、いやそれどころか道具と言えるものなら何についても言えることだと思うが、それぞれの人によって用途や使い方が違うし、同じ使い方でも体格や体調などで実際の扱いは変わるため、道具の良し悪しというものはどこかに変わらぬ規準として「これでよし」という到達点があるわけでもなく、そして必ずしもいま手にしている道具やメンテナンス用具や知見や技能が本来の目的にとって最善だという保証もないわけである。だからこそ、髭を剃るという目的に西洋剃刀だけではなくカートリッジ式の5枚刃なんてものも登場するし、製造する技術や整備する技能として良いか悪いかを簡単に判断することはできないのだ。

ちなみに、逆に参考にしてはいけないブログを紹介すると、こんなのがある。

http://shinjiyoshida.main.jp/life/2020/02/26/%E8%A5%BF%E6%B4%8B%E5%89%83%E5%88%80%EF%BC%88%E3%82%AB%E3%83%9F%E3%82%BD%E3%83%AA%EF%BC%89%E3%81%AE%E8%B3%BC%E5%85%A5%E3%81%A8%E7%A0%94%E3%81%8E%E6%96%B9%E3%83%BB%E4%BD%BF%E3%81%84%E6%96%B9/

URL に日本語を使うと、こういう馬鹿げた長大な文字列になってしまうという知識すらないのが素人だが、それにもまして剃刀の素人であるにもかかわらず、たとえば冒頭で「刃物は、よしあしの判別が難しい。プロでも、並んでいるのを見ただけじゃ分からないんじゃないかな」などと勝手に書く。分からないのは、あなたが素人だからです。プロどころか、何年か自分で剃刀を研いだり細部を観察していれば、外見だけでおおよそ良し悪しは分かるんだよ。こういう、ロハスだか何とか生活だか知らんけど、遊び金だけはうなるように持ってる都内の上場企業のサラリーマンとかが脱サラしたり田舎に引っ越してよく書いている趣味のブログの類だろうけど、専門家ヅラしたり、近所にいる職人さんや商売人の話を受け売りで業界知識のような書いてるような文章は、ソースこそ違うけれど、しょせんは WELQ のバイト学生や暇潰しの主婦が書く文章と同じである。

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