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ヴァネッサ・ハーディ『英語の世界・米語の世界―その歴史・文化・表現』(加藤恭子/訳、講談社現代新書、1996)

アメリカの言葉とイギリスの言葉に予想外の違いがあることは、昔から本書のような幾つかの一般向けの本でも語られていたが、学校でも往来でも実例を見かけたことがないため、なかなか実感としては分からない。僕らはアメリカ英語を学び、ラジオの講座でも自主的に買って聞いていたロナルド・コーツの経済英語のカセット・テープとかでも、アメリカで話されている英語を読んだり聞いたりしていた。なので、高校で英語を担当していた教師の何人かが明らかに「違う話し方」をすることには気づいていた。事情を知らなければ、イギリスの発音は「英語ができない人」の発音に聞こえる。"and" を「アーンド」と発音したり、"vitamin" を「ヴィタミン」と発音する(アメリカでは「ヴァイダミン」と発音する)からだ。でも、イギリスでは当たり前の発音である。

こうした実例が、本書にも数多く紹介されている。まさかイギリス人が "water" と発音してもアメリカ人が聞き取れないなんて事例までは想像できなかったが、確かにインターネット・ラジオが気軽に利用できるようになってアメリカの地方局のラジオ番組を聴いていると、何を言っているのかまるでわからないインタビューが多々ある。アナウンサーの言葉はさすがに聞き取れるが、現地の人が気軽に喋っている様子になると、全く分からない。でも、色々と調べるとアメリカ人だって別の土地へ行けば全くわからないことだってあるのだと知った(ネイティヴ・アメリカンや黒人やヒスパニックの訛りとか、フランス系の人々が話す特殊な方言とかは、アメリカ人でも分からない)。

但し、この手の本を読むときに注意したいのは、まるでべからず集のように記憶しようとしないことである。結局は、自分が接する相手との人間関係や取引や交友といった具体的な事情の中で解決していくことなのであって、アメリカやイギリスやオーストラリアやインドなどなどという世界中の英語のバリエーションや特徴を暗記なんてしたところで、英語版の「編集工学おじさん」といった珍妙な存在になるだけである。われわれは、歩く英語辞典のような人物になるために英語を学んだり外国人と付き合うわけではないのだ。

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