Scribble at 2020-04-21 08:59:01 Last modified: 2022-10-03 16:04:31

「誰がいつどこで感染するかわからない中、傷つけ合っても意味がない」(三重県 鈴木英敬知事)

陰湿極まりない嫌がらせ…感染患者・家族の家に投石や落書き被害 三重県

この他にも、群馬県では罹患した人の所属先大学に住所や立ち寄った場所を教えろと脅迫したり、関連する付属学校の生徒に罵声を浴びせるなど、酷い事例が色々と報道されている。

過去にも、もちろんこういうことはあった。そして、現在でもこういう卑劣な事例は「先進国」でも頻繁に起きている。フランス、ドイツ、アメリカ、イギリス、これらは差別の先進国でもあり、毎年のように新しい差別が《開発されている》と言ってもいいくらいだ。それくらい、鬱屈した人々(もちろん心配のし過ぎで精神疾患に至る人も含まれる)は色々な特徴を見つけては色々な方法で見ず知らずの他人を差別したり危害を加えようとし、そして色々な方法で正当化の理屈をこしらえる。これらは、ヒトという生き物の社会が営んできた「歴史」の一つの流れだと言ってもいい。したがって、過去にも書いたことだが、差別は僕自身も含めて誰にでも起きることであり、何か条件さえ揃えば僕が差別する側になったり差別される側になったりしうる。

この程度の事実(これはもはや理論とか仮説とか解釈とか認識ではなく「事実」と言うべきだろう)さえ弁えていれば、自分自身が不安に感じるとすれば何が理由や原因なのかを堅実かつ冷静に考える手掛かりにできる場合もあるが、残念ながら生まれや育ちという当人の条件によっては、立ち止まって考えるどころか思考が停止してしまう人も多い。そして、その末に非道とも言いうるようなことをやってきた事例が、日本にも数多くある。有名で酷い事例の一つは、関東大震災が発生したときに東京の人間が在日朝鮮人や在日中国人を虐殺したことで、数百人から数千人という幅はあるものの、少なくとも東京に住んでいる日本人の祖先がこういう悪逆非道と言うべき殺人を平気でやっていたという明白な事実が残っている。いまだに東京都をはじめとする行政は可能な限り隠そうとするものの、東京にのうのうと住んでいる人間の何割かは、こういう卑劣な殺人者や傍観者の子孫であることは少し自覚して生きるべきだ。もちろん、僕らの先祖の大半も戦国時代に兵として駆り出されて殺人を繰り返してきたわけで、政治家や官僚なんて殆どが皇族や貴族や大名や上級武士の子孫なのだから、要するに殺人者の子孫と言ってもいい。このような遠い過去の殺人を取り上げたら、自分の祖先が全く無関係だと言い張れる人など一人もいまい。

昨今、天気予報や防災情報の報道においても、各社で数値を伝えるだけではなく積極的に条件を示して行動を起こすように促している。たとえば、自治体からの警告を待たずに避難所へ向かってくださいなどとアナウンサーが訴えるのを目にする機会も増えた筈である。では、新型コロナウイルスに罹患した人の家屋へ石を投げつけたり、同じ職場や関連団体の人へ罵声を浴びせることは、その人物にとって何かの感染症予防になるのだろうか。もちろん、まともな状況であれば本人すら笑い飛ばすような愚行であろう。しかし、何らかの条件で危機的な状況に至った場合、多くの人は冷静さを失ったり不安で思考力が押し潰されることもある。いきなり解雇されたとか、出勤できずに日銭が稼げなくなったとか、ふだんは自分が不当な扱いを受ける側なので自分が差別できるきっかけを無自覚に求めていたとか、それなりに同情すべき場合もある。しかし、僕が上記のような事例を何度も目にして、まず行政や報道機関へ求めたいのは、他人の家へ投石するとか、押しかけて行って何かを強要するというのは、明白に犯罪であるという強いメッセージを出すことである。正直、「おたがいさま」だの「助け合い」だのと言って、振り上げた拳を下すような《漫画的》と言っていいような反応を、こうした人々に求めることはできない。まず、かような事態で著しく冷静さを失いつつある人には、行動をあるていど抑制できるだけの発言が必要だ。このような発言は、もちろん国民の「自由」を侵害するものでもなんでもない。アメリカ人の一部には(そして日本でもポピュリストやリバタリアン、あるいは自由主義を奉ずる保守やネトウヨの多くは)、こうしたことですら憲法で保障されるべき「自由」だと言い張る者もいるようだが、それはアメリカのように自由を国民の手で勝ち取ってきたような歴史をもつ社会ですら、生まれながらに多くのことが保障されている状況で生まれ育つと、かような観念論で放漫と自由の区別もつかない者が育つという一例だろう。

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